【トライアスロン】小さな鉄人・上田藍が狙うリオの「金メダル」 (3ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • 五十嵐和博●写真 photo by Igarashi Kazuhiro

 山根がちょうど関西で仕事があったこともあり、京都に立ち寄ってくれた。そして彼女の水泳、陸上に関する記録を見て、「会員制のクラブなので、入会すれば指導することはできる。ただ、今は選手のスカウティングはしていない。それでもいいか?」と聞いた。聞く人によっては、暗に断っているのだと取るだろう。しかし、上田の耳にはそうは聞こえなかった。彼女は目を輝かせて大きな声で即答した。
「よろしくお願いします!」

 そして、高校を卒業と同時に千葉県で一人暮らしを始める。

「水泳で勝てなかった。陸上でも勝てなかった。なのに、ふたつが合わさったら勝てた。その競技を指導してくださる、日本トップクラスのコーチが目の前にいる。よく、『思いきったね』って言われるんですが、私には躊躇(ためら)う理由の方が見当たらなくて」

 トライアスロンは、3種目の能力を並行して向上させていくため、必然的に練習時間が長くなる。トップ選手になると、一日6~8時間を練習に費やす。

 本格的に競技を始めたばかりの上田の練習風景の動画が残っている。そこには、練習がきつくなればなるほど笑う彼女の姿が映っていた。

「もちろん苦しいですよ。でも、きつければきついほどうれしくて。だって、強くなれるから。やったらやった分だけ結果がついてくることが、本当に楽しかったんです」

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