髙橋大輔、最後のフリー演技に挑む。「ひとりの体感を楽しみたい」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 この日のSPでは、冒頭の3フリップ+3トーループで2つ目のジャンプが回転不足を取られ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)はステップアウトで着氷が大きく乱れた。そして、最後の3回転ルッツでは転倒してしまった。この結果、ジャンプ3本は全て回転不足を取られ、「世界一」と言われた最後の見せ場であるステップでは、疲労によって足が動かずに失速して、本来の輝きは影を潜めた。

「緊張感からか、自分の演技を見せることができなかった。うちにこもっている感覚があった。これが試合なのかなとか、全日本の緊張感なのかなと、途中で感じました。ダンサブルなナンバーだったので、体が動かなかったことで、リズム感とか迫力とかがすごく少なかった。もうすこしパワフルさやダイナミックさを見せたかったと思いました。『ザ・フェニックス』はパワフルな曲なので、それを体現したかったが、自分としてはできなかったかなと思います。

 最後のステップでは、気持ちとしてはまだまだ全然いけると思って、いけそうだったんですけど、足に来ちゃって、足がついてこなくて、『なんとか動いてくれ』と思ったんですけど......。緊張していたからか、練習がうまくいっていなかったからか、わからないんですけど、気持ちと体がうまくかみ合わなかったですね」

 技術点は出場30人中最下位の24.53点にとどまったものの、演技構成点の42.42点は羽生結弦、宇野昌磨に続く3番目の高得点だった。

「(演技の好評価については)自分としてはよくなかった。あと10年若かったらなと思います。(SPの結果)フリーに進めるので、フリーでは何とか挽回できればなと思います。試合としては、この全日本に立つことはすごく贅沢なこと。だから最後は思い切り、ひとりの体感を楽しんで滑りたいです」

 集大成のフリーは23日。プログラムは現役復帰した昨季にブノワ・リショー氏が振り付けた『ペール・グリーン・ゴースト』だ。これがシングルでのラスト演技であり、競技者としてジャンプを跳ぶ髙橋の見納めでもある。記憶に残る納得の演技を見せてほしい。




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