宇野昌磨にとって、過去2回より
今年の全日本制覇が意義深い理由

  • 折山淑美●取材・文 Text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「ケガはショートの前の6分間練習ではなく、当日の公式練習前のウォーミングアップの時でした。右足首を強く捻ったけど、練習の15分くらい前で最初はぜんぜん気にしなかったんですが、練習が終わったあとからすごく痛くなってきた。それでも何とかショートをできたことには(自分でも)驚きましたが、翌日に病院に行ってMRIを撮ってみたら強く捻挫をしているという診断でした。でも捻挫と聞いて、無理をして1週間くらい長引いても選手生命にかかわることはないということだったので、フリーに挑むことに決めました。

 ショートが終わってから1日空かなければフリーには出ることができなかったし、最初は歩くことも難しかったけど、ついてくれているトレーナーさんや心配してくれる皆さんのお陰で、フリーを最後まで滑り切ることができたかなと思います」

ケガをおしての出場だったが、見事3連覇を達成した宇野昌磨ケガをおしての出場だったが、見事3連覇を達成した宇野昌磨 12月24日の全日本フィギュアスケート選手権。男子フリーの演技が終わった後に、宇野昌磨はケガの経緯をこう説明した。

 樋口美穂子コーチに「どうしてそこまでして出るの?」と聞かれた宇野は、「それが僕の生き方だから」と答えたという。

「もともと、大きい試合でも小さい試合でも休みたくないという気持ちがあります。これがもしB級の試合だったら、今回の状態では出なかったかもしれないけれど、全日本というのは僕にとっても大きな試合ですし......。言ってみればプライドですかね。僕は歩けるなら試合に出たいという気持ちなので、今回も無理してでも試合に出ようと思っていました」

 そんな気持ちを宇野はショートプログラム(SP)でも見せていた。「右足首への負担が大きい最初の4回転フリップを回避して3回転サルコウに変えたらどうか」とアドバイスされたが、結局は「逃げになるから」と4回転フリップを跳んだ。

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