現役キャバ嬢レスラー・リアラはデビュー前からやられっぱなし それでも、ウナギ・サヤカ戦も泥臭く闘って「爪痕を残す」 (2ページ目)

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko
  • photo by 林ユバ

【「あんたの人生は、もうあんたひとりのもんじゃないんだよ!」】

 4月1日、横浜ラジアントホール大会で、春日萌花とエキシビションマッチを行なった。ピンクのガンジョTシャツを着用し、入場曲はまだない。春日はリアラを容赦なく叩き潰した。リアラはやられっぱなしだったが、どれだけやられても立ち向かっていく姿は観客の胸を打った。

そして5月5日、ついに後楽園ホール大会でデビューすることが決まった。

 デビュー戦の3日前、春日と再びエキシビションマッチを行なった。「練習生」と書かれた黒いTシャツを着て、無音での地味な入場だった。しかし試合が始まると、リアラは攻めた。攻めて攻めて攻めまくり、前回のエキシビションから大きな成長を見せつけた。

 試合後、春日はマイクを取り、リアラに向かってこう言った。「あんたの人生は、もうあんたひとりのもんじゃないんだよ! 今こうやって見に来てくれているお客さんが、全部気持ちを乗せてくれているから、もうあんたの人生はあんただけのもんじゃないんだよ!」――。リアラは泣き崩れた。春日は重度の腎不全を患う姉に腎臓を提供するため、6月から欠場することが決まっていた。

「春日さんのあのマイクで、すべて辻褄が合った。腎臓の移植手術をする直前に2回もエキシビションをやるって、春日さんが『うん』って言わなきゃ実現しないじゃないですか。春日さんも私がデビューするのを手助けしてくれたんだなと思ったら、ブワァってなりましたね。

 それまで私は、早くデビューしたいとか、不安だとか、勝ちたいとか、自分本位だったんです。春日さんのマイクを聞いて、違う角度の見方ができた。ファンの人の気持ちも乗せた試合がしたいと思いました」

 そして迎えた、デビュー戦。対戦相手のYuuRIにコテンパンにやられた。しかし、テクニックが足りなくても、スタミナが切れても、泣き叫びながら立ち向かっていったリアラ。そんな彼女を、誰が笑えるだろう。子どもの頃からの夢を叶えるため、1年間、必死にもがき続けた彼女を、一体誰が笑えるだろう。最後に放ったヨロヨロのドロップキックは、彼女がこれまで身に着けてきたどんな宝石よりも輝いていた。

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