井上尚弥の破壊力は「単純に強いだけではない」。元アジア太平洋王者のいとこが体感した「体にダメージが残る」パンチ

  • Text by Sportiva

 12月14日、両国国技館で行なわれたWBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチで、統一王者の井上尚弥(大橋ジム)が挑戦者のアラン・ディパエン(タイ)を8ラウンドTKOで下した。

 その試合について、井上尚弥のいとこで元ボクサーの井上浩樹(こうき)に話を聞いた。年齢は尚弥のひとつ上の29歳で、プロ戦績は16戦15勝(12KO)1敗。2019年12月にはWBOアジア太平洋スーパーライト級王者になったが、昨年7月にタイトル防衛に失敗し、惜しまれつつも引退。現在は尚弥や弟・拓真などのサポートをしながら、漫画家としても活躍している。

"最強の井上家"で共に汗を流した男は、今回の防衛戦をどう見ていたのか。さらに、井上尚弥の気になる今後についても語った。

左リードジャブで早いラウンドから試合を支配した井上尚弥 photo by Philip FONG / AFP左リードジャブで早いラウンドから試合を支配した井上尚弥 photo by Philip FONG / AFPこの記事に関連する写真を見る***

【挑戦者がパンチを耐えられた理由】

――今回の試合でもっとも印象的だったところから聞かせてください。

「僕は勝利者インタビューが一番よかったです(笑)。これまではスターのオーラが出すぎていて、少し遠い存在という印象があったファンもいたと思いますが、今回は倒すまで8ラウンドかかったことを『あれ、俺パンチないのかな?と感じました』と言うなど、少し子供っぽい"素の尚弥"の一面が出ていました。あれでイメージが変わった方もいるんじゃないですかね」

――確かにそうですね。試合内容に関してはいかがですか?

「ディパエン選手が手を出せない状態にしたことがすごかったです。手を出したらカウンターをもらってしまうから前に出られず、防御しかできない。ラッキーパンチを狙うしかなくなりました。

 でも、そうなった選手を倒して勝つのは難しいんです。前に出てパンチを当てようと意識すると、相手のパンチが"見えない"ことがあって、もらうとダメージが大きくなる。一方で下がりながら防御を固め、打たれるのを覚悟して腹筋にもしっかり力を入れている相手はなかなかKOできないものなんですよ。それでも倒しきった尚弥はさすがでした」

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