赤井沙希への偏見とバッシングの嵐。それでも男子プロレスラーと闘い続ける理由

  • 尾崎ムギ子●文 text by Ozaki Mugiko

■『今こそ女子プロレス!』vol.2
赤井沙希 後編 

前編から読む:プロレスデビューに父・英和と母の反応は正反対>>

 男子プロレス団体・DDTに所属する唯一の女子レスラー、赤井沙希。身長174cm、53kgのスレンダーな彼女がひとり、筋骨隆々の男子レスラーたちに混ざって闘う様はあまりにも可憐で美しく、ファンの心を掴んで離さない。

 17歳からモデル、女優、タレントとして活躍していたが、2013年8月18日、DDT両国国技館大会でプロレスデビュー。翌年12月、東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」で、女子初の新人賞を受賞した。

 華々しくスタートした、プロレス人生。しかしそれをよく思わない人たちもいた。

自身のプロレスラー人生を振り返る赤井沙希 photo by Hayashi Yuba自身のプロレスラー人生を振り返る赤井沙希 photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る***

「最初はものすごくバッシングされました。プロレス大賞・新人賞をいただいた時は、『タレント活動してれば獲れるのか。"ビジュアリスト賞"に名前を変えたほうがいいんじゃないか』とか。SNSにも攻撃的なDMがめっちゃきました。『世Ⅳ虎(現・世志琥)にボコボコにされて、顔が変わるのを楽しみにしてます』と言われたこともありましたね」

 女子プロレス団体からも嫌われ、女子レスラーの集合写真を撮った時、赤井だけ切り取られたこともあった。未だに、男子の団体でチヤホヤされ、お高くとまっているように見られてしまう。

「チヤホヤはされてないんですけどね。最初の1年くらいはゲストとして扱われてたけど、今じゃあもう、後輩もタメ口をきいてくるし、『ねえ、おばさん』とか言われるし」

"唯一の女子レスラー"ならではの悩みも多い。女子の控室がない時は、トイレで着替えなければいけない。化粧直しができない。生理の時にだれにも言えない......。

「バス移動はきついので、自腹で新幹線に乗ったりします。以前、バスの中でお化粧してたら、デビュー2年目くらいの上野(勇希)くんがめっちゃ見てきて、『そんなとこ描くんですね』とか言われて、めっちゃウザかったです(笑)」

「〇〇選手とつき合ってるんでしょ」「〇〇選手のファンだから近づいたんでしょ」とファンに叩かれることもあった。だから、若い選手とはなるべく距離を置くようにした。自分が叩かれるのはいいが、自分のせいでみんなに迷惑を掛けてしまうのがつらかった。

 そんな赤井を可愛がったのが、坂口征夫、高梨将弘、KUDOたち。赤井が「ファンの方に見られるかもしれないから、離れたほうがいいです」と言うと、「そんなもんで俺たちの人気が終わったら、それまでだよ」と言われた。プロレスラーとして認められた気がして嬉しかった。

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