鈴木明子さんが語る、全日本フィギュアの羽生結弦と宇野昌磨 (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

――宇野選手に続く若手といえば、どんな選手の顔が浮かびますか。

鈴木 昨年の全日本選手権で、シニア選手を抑えて6位入賞を果たした山本草太選手(2000年1月生まれの15歳)です。先日のジュニアグランプリファイナルで3位に入りました。

 私の恩師でもあるコーチの長久保裕先生いわく「ひょろっとして弱々しいけど、ジャンプは跳べる。羽生選手とだぶる」ということです。身長165センチ、体重48キロの身体はこれからたくましくなっていくでしょう。山本選手は4回転とトリプルアクセルを完成させつつあります。

 ジャンプが得意なのですが、彼の特長はスケートが伸びること。スーッと力が入っていないのにスピードがあります。自動車でいえば、『プリウス』のような感じです。「オリンピックに出たい」と堂々と言い切る山本選手に大ブレイクの予感がします。

羽生結弦を超えられるのは羽生本人だけ

――今シーズン、世界中を驚かせているのが、羽生結弦選手の演技です。11月のグランプリシリーズNHK杯で史上初の300点突破を果たし、続くグランプリファイナルではその最高点をさらに上回る330点をマークしました。

鈴木 グランプリファイナル3連覇を果たした羽生選手は、ほかの選手より数段高い場所にいるような気がします。プログラムの基礎点が高いので、よほどのミスをしないかぎり下位に沈むことは考えられません。世界中を見渡しても、彼と同じレベルで戦える人はほとんどいません。彼ほど難易度の高いジャンプを安定して跳べる選手はほかに見当たりません。

――まさに「絶対王者」と呼ぶにふさわしい強さを見せていますね。

鈴木 もちろん、並外れた努力の賜物ですが、失敗を恐れない姿勢が今の羽生選手をつくりあげたのだと思います。意外と転倒することの多い選手で、アイスショーでも果敢に難しい技に挑んでいきます。普通の人間なら無難にまとめるところでも、彼は躊躇(ちゅうちょ)なく攻めます。失敗を恐れない人間はやっぱり強い。

 羽生選手が記録した最高得点を狙えるのは、羽生選手だけ。ジャンプも、演技構成もすばらしい。今は、課題を見つけるのが楽しくて仕方がないといった感じですね。

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