それでもリオへ挑戦するのか。市民ランナー、川内優輝の揺れる心

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 気温12. 9度で天候は曇り。ほぼ無風という好条件の中でスタートした12月6日の福岡国際マラソン。来年のリオデジャネイロ五輪の男子国内選考レースの第1弾として行なわれたこのレースに、「一発で代表を決める」と公言して臨んだ川内優輝(埼玉県庁)は10kmを過ぎた頃から苦しそうな表情に変わった。

最後の最後で大塚良軌に競り負けてしまった川内優輝最後の最後で大塚良軌に競り負けてしまった川内優輝 そして11km過ぎの給水所を通過すると徐々に遅れ始め、ジワジワと差をつけられてしまう。14.7kmでトップとの差は25秒。川内のリオデジャネイロ五輪は、彼の表情の厳しさと比例するように遠ざかっていった。

 最初の10kmまで、川内はペースメーカーが引っ張る集団の中で、ゆるやかにペースを上げる走りを見せていた。

「10km手前から左ふくらはぎが攣(つ)りそうになってきて、ふくらはぎの下の方から足底にかけて痺れるような違和感が出てきました。そんな状態になって離されてしまった時点で、今日のレースが終わった感じでした」

 その後は26~27秒遅れていた第2集団に追いつかれてしばらく一緒に走っていたが、16kmを過ぎてその集団からも脱落。20km地点ではトップから1分38秒も遅れ、順位もペースメーカーを除いて20位にまで落ちていた。

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