【月刊・白鵬】横綱が感動した羽生結弦「美しさの原点」 (4ページ目)

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

 ピーンと張り詰めた会場の空気は、フィギュアスケート独特のものなのでしょうね。これが、五輪会場だったら、どれほどの緊迫感が漂うのか。各選手にかかるプレッシャーなど、とても想像に及びません。羽生選手は、そうした重圧に打ち勝って金メダルを獲得。だからこそ、多くの人たちに感動を与え、見ている者の心を揺さぶることができるのでしょう。

 かねてから思っていることなのですが、勝負の場では、運をつかむ人と、そうじゃない人と、2種類の人が存在すると思います。そこで、勝者となるのは、もちろん運をつかみとる力がある人です。それも、実力のうちだと思っています。

 羽生選手は、まさに運をつかみとる力がある人です。今季序盤はケガなどアクシデントに見舞われましたが、結局最後には最高の形でシーズンを終えましたからね。

 また、羽生選手は20歳という若さながら、「王者の責任感」というものを持ち合わせていますよね。22歳で横綱に昇進した私も、「横綱の責任感」とは何なのか、ずっと考えながら相撲をとってきましたからわかります。そして、羽生選手には「もう、後には引き返せない」――そうした思いを背負った人間の強さを、改めて見せてもらったような気がします。

 頂点に立つ人間が、その責任と結果を果たす姿は、とても美しかったです。すごく貴重な経験をさせてもらいました。

好評発売中!『羽生結弦から始まる時代』
/pages/zoukan_figure_2014_2015//pages/zoukan_figure_2014_2015/

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る