羽生結弦が取り戻した笑顔と自信。「滑っていて幸せでした」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao

 スペインのバルセロナで開催されているグランプリファイナル2日目。12月12日の男子ショートプログラム(SP)で、ピアノの音色に合わせて静かに滑り出した1番滑走の羽生結弦は、NHK杯から冒頭に持ってきている4回転トーループをキッチリと決め、観客席から大歓声があがった。

 羽生は、続くシットスピンとキャメルスピンもスピード感十分にこなし、演技後半に入って最初のトリプルアクセルも完璧に決めた。

SPの演技中に笑顔を見せた羽生結弦SPの演技中に笑顔を見せた羽生結弦 9日にバルセロナに入り、10日の公式練習で滑り出した羽生は、4回転を強く意識していた。ウォーミングアップのあとステップで身体を慣らし、3回転ルッツ+3回転トーループを跳んでからトリプルアクセルを決め、4回転に臨む順番だった。翌11日も公式練習で4回転を8、9回は跳んでいたが、試合当日の公式練習ではサルコウも含めて4回転は4回に減って、感覚をつかんできている様子だった。

 そして、SP直前の6分間練習では、3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプとトリプルアクセルを決めたあと、一度両手を広げて跳び上がる方向を確認すると、次にはしっかりした軸で4回転トーループを1回跳んだだけ。その後は身体を慣らすだけで落ち着いて本番に臨んでいた。

「今日の6分間練習ではルッツは良かったけど、4回転トーループやトリプルアクセルは、そんなにパーフェクトにハマッた感じではなかったんです。それで、もう1回跳んでみることも考えたけど、今回は『練習は本番ではないんだ』というのを頭に入れてやろうと思っていたので(跳ばなかった)......。その結果、本番でいいものができたので、本当によかったと思います」

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