【大相撲】舞の海が『火ノ丸相撲』を読んで、思うこと

  • スポルティーバ編集部●取材・文 text by Sportiva
  • 村上庄吾●撮影 photo by Murakami Shogo

――このマンガをきっかけに相撲に興味を持つ小中学生も多いとか

「相撲人気が目に見えて回復しているという実感はないですけど、相撲を題材に取り上げてくれたのは、ありがたいですね。これで少しでも相撲のおもしろさに触れてもらい、取組を見てくれたり、相撲を取ってくれたら、うれしいですよね」

――このマンガを通して、相撲はサイズや単なる腕力だけでは勝負は決まらない、ということを知りました。

「そう、そこなんですよ。私も体が小さくて、小学校の高学年くらいから勝てなくなった。そこで小さい子は大抵、やめてしまうのですが、そこで我慢して続けていると、技術が磨かれて勝てるようになりました。

 フランスの詩人、ジャン・コクトーは日本で相撲を見てこう言ったそうです。『バランスの奇跡』だと。知らない人が見ると、単なる押し合いに見えるかもしれませんが、まさに勝負はバランスの崩し合いなんですよ。太ったアンコ型の力士も必死に動いて、そのバランスを保とうとしているんです」

――主人公は心底、相撲の魅力に取り憑かれていますが、舞の海さんは相撲の魅力はどこだと思いますか?

「相撲の競技性をよく観察すると、小さい力士でも工夫次第で勝てるような競技になっている。そこが奥深いところで、おもしろいところなんです。まず、土俵は丸い。丸く使うと、いくらでも(スペースを)使えて、おもしろい展開が生まれるんです。

 次に直径4メートル55センチという土俵の大きさ。これより小さいと、小さい力士はすぐに押し出されてしまう。これより大きくなると、お互い攻め合わなくなってしまう。この大きさで、大きい力士が小さい力士を追い回してくる。そこで、その勢いを利用して、逆転劇も生まれるんです。

 そして、組み合ってからではなく、"立ち合い"で勝負が始まる。これも小さい力士が勝つ要素が生まれる一つの理由です。組み合わなくても、離れても勝負ができる。(組み合ってから投げを打ち合う)韓国相撲(シルム)をやったことがありますが、勝負になりませんでしたね」


 実際の大相撲に話題を移す。現在、幕内力士の平均身長は約185センチ、体重は約160キロ。120キロ台の力士はゼロで、一番軽い力士が、松鳳山(しょうほうざん/二所ノ関部屋)と亜夢露(あむうる/阿武松部屋)で134キロ。現役時代、小錦や曙ら、200キロ台の力士とも対戦し、勝利をしたこともある舞の海関。その体重差ある取組が話題を呼び、「小よく大を制す」相撲が館内を沸かせた。今、それを望むのは難しいことなのだろうか。

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