【大相撲】名力士たちが語る、8勝7敗 逸ノ城のこれから

  • 福留崇広●文 text by Fukutome Takahiro
  • photo by Kyodo News

 関脇・逸ノ城の15日間が終わった。結果は8勝7敗の勝ち越しだった。千秋楽、照ノ富士に2分11秒の熱戦の末、寄り切られた後の支度部屋で口を開いた。

「重かった。立ち合いが悪かった。何とかガップリ取れたけど......。稽古して次、また勝てるようにしたい」
 
 新三役、関脇での勝ち越しに怪物は「勝ち越せたのはよかったですが、全然ダメです。もっと稽古しないと上位には通じないことが分かりました」と反省した。先場所(9月)は13勝2敗の快進撃で一気に番付を上げた。10月、帯状疱疹で入院して秋巡業を途中休場。万全の体調ではなかった。それだけに場所前は「勝ち越せなかったらどうしようかと思った」と不安を隠さなかった。それでも8勝を上げて、来年に希望をつないだ。

9日目、横綱・白鵬に敗れた逸ノ城(右)。上位陣には歯が立 たなかったが、何とか8勝7敗で勝ち越し9日目、横綱・白鵬に敗れた逸ノ城(右)。上位陣には歯が立 たなかったが、何とか8勝7敗で勝ち越し

 逸ノ城に沸いた九州(11月)場所だった。若貴全盛期の1997年以来、17年ぶりに初日が満員御礼でスタート。平日の木曜日だった12日目も満員御礼の垂れ幕が下がり、満員御礼は計7日間、うち札止めは4日間。観客動員も15日間すべてで前年を上回り、総動員は7万1445から8万2577へと約1万1000人も増えた。

 九州場所担当の松ヶ根部長(元大関・若嶋津)は「多くの力士が頑張ったおかげですが、やはり、逸ノ城が9月場所であれだけの活躍をしたのが大きかった。遠藤の時もそうだけど、新しい力士がパッと出てくると、お客さんはやはり注目するし、期待する」と話した。怪物への期待が、例年、閑古鳥の鳴いていた九州の風景を激変させたと言っていい。

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