選手がナショナルトレセンから受ける、無形の恩恵

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 石山慎治●写真 photo by Ishiyama Shinji

10月特集 東京オリンピック 1964の栄光、2020の展望(16)

トレセンスタッフに聞く、メダリストが生まれる理由(2)

 体操ニッポンの復活―――

 その背景にあったのは、充実した施設と素晴らしい練習環境だった。とりわけ大きかったのが、器械器具だ。体操の器械器具は、すべて世界レベルだった。実は、それこそがNTCのコンセプトなのである。そのため体操以外の他競技の設備、器械器具もすべて「世界基準」になっている。
(前回の記事はこちら)

最新の器械を備えた体操競技施設。このトレセン内で、 そのスペースはハンドボールに続く、2番目の広さ!最新の器械を備えた体操競技施設。このトレセン内で、 そのスペースはハンドボールに続く、2番目の広さ!

「敷地が狭いので観客席は作れませんが、観客席があったら、世界大会を開けるような施設を作ろうというのがコンセプトなのです」。JOC強化部の笠原健司氏は、そう言う。  

 そのこだわりは「完全コピー」だという。例えばテニスコートは、グランドスラム大会、それぞれコートのサーフェスがまったく異なる。そして、このトレセンには全米、全仏とまったく同じサーフェスのコートがあるのだ。全仏(ローラン・ギャロス)はクレーコートだが、わざわざフランスから同じ土を運び。コートとコートの間やエンドラインから後ろの壁までの距離も全仏会場とまったく同じサイズにした。

「コートは国際ルール通りのスペックにして、コート間の距離など細かいルールをすべて忠実に実現したんです。そうしないとトレセンは狭いけど、大会会場は広かったとか、そういう空間の違いに選手が戸惑ってしまう。彼らが戦う空間と同じじゃなければ意味がないんです。だから、ここは実際のサイズだけではなく、空間の感覚も現地と同じにしています。すべてが世界基準なんです」


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