【水泳】入江陵介、実感した2種目制覇の難しさ

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 出場選手ランキング1位で臨んだ大会初日の100m背泳ぎで、入江陵介は今大会日本チームに初の金メダルをもたらしていた。前半の50mを4月の日本選手権(52秒57/今季世界ランキング2位)のときより、あえて0秒11遅い25秒69で入り、終盤に激しく追い込んできたロンドン五輪王者のマット・グレバース(アメリカ)を0秒07差で抑える冷静な泳ぎだった。

ゴール後、2位という結果に呆然としていた入江陵介ゴール後、2位という結果に呆然としていた入江陵介 3日目も前日に続いて雨が降り、冷え込むコンディションになったパンパシフィック選手権。200m背泳ぎ予選では、男子最初の種目100mバタフライでトップタイムを出し、決勝進出を決めていたライアン・ロクテが棄権。そんな中、入江は第2組で2位以下を寄せつけない泳ぎでトップ通過を果たした。

 決勝が始まる夕方に雨は止んだが、気温が15度と冷え込む気象条件。2種目目の優勝を狙った入江は、少し慎重になってしまい、50mの折り返しは予選より0秒23も遅い27秒22で2番手通過。折り返してからはきれいな泳ぎでトップに立ったが、100mの折り返しは予選より0秒10遅い56秒18で、圧倒的な強さを見せられなかった。

「全体的にスローペースでの展開になったというか、両隣のクラリーとムルフィー(ともにアメリカ)も遅かったので、自分のペースが遅くなってしまったのもあります。自分自身の泳ぎの感覚も良くなかったのだと思うけど、自分ではもっと速いタイムで泳いでいるつもりでした」

 150mはトップで折り返し、1分25秒73のタイムで通過。今季これに近いタイムだと、1分54秒63で泳いだ6月のジャパンオープンの通過タイムで、それより0秒01遅いだけだった。だが今大会、そのジャパンオープンと違ったのは、ラスト50mでまったく伸びず、前日の400m個人メドレーの背泳ぎで2位の記録を出して好調なタイラー・クラリーの追い上げを許してしまったことだ。

 ゴール直前では完全に負けたと分かるような展開に。結局クラリーには0秒23差をつけられる、1分55秒14の2位でゴールした。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る