【月刊・白鵬】横綱に多大な影響を与えた、ふたりの「引退力士」

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

第37回:琴欧洲と雅山

雅山の断髪式に臨んだ白鵬。雅山の断髪式に臨んだ白鵬。春は「出会い」と「別れ」の季節である。
相撲界も、春場所(3月場所)では、
多くの新弟子が初土俵を踏んだ。一方で、
土俵から去った力士たちもいる。なかでも、
横綱との関わりが深かったのは、琴欧洲と雅山。
彼らとの思い出を横綱が振り返る――。

 大阪での大相撲春場所(3月場所)を終えたあと、私たち力士は各地を巡業しながら、夏場所(5月場所)に向けて、日々調整を重ねています。私も、春場所13日目に土俵から落ちたときに負った右手のケガが徐々に回復。今では少し腫れている程度で、稽古に励んでいます。ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です。

 さて、春爛漫の4月。進学や就職など、新たな環境のもとでこの季節を迎えられた方も多いのではないかと思いますが、その直前には卒業や転勤など、さまざまな"別れ"もあったかと存じます。

 相撲界でも春場所を最後に、47場所という長い間、大関を務めてきた琴欧洲(31歳)が土俵を去りました。若い時代から、お互いにライバル関係にあっただけに、彼との思い出は尽きません。

 彼は、私よりも1年半近くあとで初土俵を踏んだのですが、出世のスピードはとてつもなく速かったですね。まるで私のすぐあとを追いかけるようにして、新十両、新入幕を果たし、その後の出世は私よりも速く、瞬(またた)く間に大関に駆け上がってきました。

 何より2mを超える身長が、彼の武器でした。昨年引退した把瑠都もそうですが、彼らは間違いなく「規格外」の力士だったと思いますし、私にとって、常に脅威の存在でしたね。

 そんな琴欧洲ですが、負傷の影響もあって、今年の初場所(1月場所)から大関を陥落してしまいました。そして、初場所こそ8勝7敗で勝ち越したものの、春場所では初日に勝って以降は黒星を重ね、11日目から休場。翌日、引退が発表されました。

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