羽生結弦と町田樹、これから始まるライバル物語 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「失敗したと思ったサルコウで何とか立てたのは、これからにつながると思います。昨シーズン(2012-2013)からフリーに初めて4回転サルコウを組み入れて、ほぼパーフェクトにできていた昨シーズンのフィンランディア杯以来、やっと跳べたので、この試合でまたスタートラインに戻れたなと思います。これまでの試合でも気持ちのコントロールなどいろいろなことを考え、いろいろなことを経験して成長してきたと思いますが、今回が一番成長できた試合だと思います」

 場内の優勝インタビューで羽生は、「(五輪金メダリストで)五輪直後の世界選手権を勝った選手は、アレクセイ・ヤグディン選手(ロシア/2002年ソルトレイク五輪、2002年世界選手権の金メダリスト)以来。僕が憧れていた選手に、ちょっとは近づけたかなと思います」と話した。

 昨年12月のGPファイナルを含めて、ソチ五輪、世界選手権の3冠を獲得したことについては、「今シーズンの3つのタイトルは獲ったかもしれないけど、来シーズンやその次のシーズンになればまた違った試合ですし……。今シーズンの試合は今シーズンでしかないから、また新しいシーズンの新しい試合に向けて頑張りたいと思います」と気持ちを引き締めていた。

 タイトルを総なめにしたとはいえ、羽生はまだまだ発展途上の19歳。そんな羽生にとって、今回2位の町田の存在は、成長していくための大きなエネルギーになるだろう。町田は今回の世界選手権で、今後の自分の伸びしろの確かさも感じたという。「今シーズンは羽生くんの頑張りに勇気づけられて、僕も彼のように進みたいと頑張ってきたのがここまでこられた要因。これからも一緒に進めるように頑張っていきたい」と語る。この先、羽生と町田は、競り合いながら成長していけるはずだ。

 二人がこれからともに切磋琢磨していき、かつて、ロシアのトップスケーターとして君臨したエフゲニー・プルシェンコ(2006年トリノ五輪金メダリスト)とヤグディンのような関係になっていけば……。そんなことを想像しながら、来シーズンが今から楽しみになってきた。

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