髙橋大輔が語った本心。「ソチまで続けてよかった」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Suano/JMPA

 髙橋は、膝のケガを乗り越えて出場した前回のバンクーバー五輪では、銅メダルを獲得。その後競技を続行するかどうか迷う時もあったが、「まだやりたい」という自分の気持ちに正直に従った。

3回目の五輪を髙橋大輔らしい演技で締め括り観客に手を振る3回目の五輪を髙橋大輔らしい演技で締め括り観客に手を振る「ソチでの結果(6位)を見れば、『やっぱりバンクーバーで終わっておけばよかったじゃないか』と思う人もいるかもしれませんけど、自分としては11年のモスクワの世界選手権が終わってソチへ行くと決めてからの3年間は、いいことも悪いこともたくさん経験してきました。そのうえで3回目の五輪に来ることができて、本当に続けてきてよかったと思います」

 これまでの3回の五輪を振り返って、自分自身の五輪までの道のりも、開催国も、戦うメンバーもそれぞれ違っている。髙橋はそんな五輪を「最高に楽しい舞台でもあるけど、最高にきつい舞台だと思っています。でもそこはアスリートにとって、一番やりがいを感じる場所なんじゃないかなと思います」と表現する。

 結局、髙橋はフリーで6位に終わった。合計得点でも町田樹(5位)にひっくり返されての6位。

「気持ちとしてはやり切ったかなと思うけど、演技としてはやり切れてないんじゃないかなと思います。でも、この大舞台でできてこそ本物だと思うので、これが僕の実力だと思います」

 こう言って高橋は寂しげに笑った。だがジャンプを失敗したとはいえ、演技全体からは髙橋大輔というスケーターの今の思いが静かに伝わってきた。

「自分の演技だけは出し切りたいと強く思っていたので、それはできたかなと思います。日本からもお客さんがたくさん来られていたので、そういう方たちに向けても精一杯やりたかった」

 6位という納得できない順位。そして4回転トーループを成功させられなかったという悔しさや自分自身に対してのもどかしさ。彼にとってはさまざまな感情が交錯する大会となったが、最後の最後まで髙橋大輔らしい演技を観られたのが、ファンにとっては大きなプレゼントだったのではないだろうか。
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