皆川賢太郎「今はただ、単純に五輪という舞台に立ちたい」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 山本雷太●写真 photo by Yamamoto Raita(人物) photo by AFLO(競技)

 12~13年シーズンは北米カップとファーイーストカップで戦い、W杯出場権を獲得した。ほぼ確定した湯浅直樹と佐々木明以外、残りふたつの五輪代表枠に入るには、日本スキー連盟が設定した“W杯など世界レベルの大会で、20位以内に2回以上入る」という選考条件をクリアするしかない。そのチャンスは5レースしかないのだ。

 それでも皆川は「遅い順番でスタートする選手はすごく不利だから、そういう意味では厳しい状態だと思うけど、残された2枠を争う選手の中では、僕が一番チャンスをいただいているかもしれないですね」と前向きに捉える。

「今はただ、単純に五輪という舞台に立ちたいだけですね。3位につけて迎えたトリノの2本目はものすごい緊張感だったけど、競技者としてまたそれを感じたい。しっかり計算して『歴史を変えてやろう』と思う瞬間をもう一回欲しいなと思いますね」

 若い頃は、負けたくないと思うネガティブパワーがエネルギー源だった。それがだんだんと歳をとってきて、それだけがすべてではないと気がつく。若い頃のように体が動かなくなれば、競技の本質をこれまで以上に追求しなければいけなくなる。37歳の今、それがおもしろいと感じている。

「今はできないことだらけだから、それをできるようにするためには自分と戦わなくてはいけない。だから本当の意味で自分に負けないとか、弱くならないとか、ずるくならないとか、子供の頃に言われていたことに戻ってきています。だから今は、ひとりの人間として自分に勝ちたいです。何か成果を上げるということは、生きていく上で何度も味わえるものではないので、競技者である以上、最高の舞台でそれを味わいたい。そしてソチでは僕だけじゃなく、嫁の愛子にも勝ってもらいたいですね」

 11月のW杯第1戦は1本目68位に終わり、12月の第2戦は1本目でフィニッシュできずに終わっている。残されたチャンスは1月6日からの3試合。皆川はそこに、勝負をかける。

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