フィギュアNHK杯優勝。五輪に向けスイッチが入った髙橋大輔

  • 辛仁夏●文text by Synn Yinha
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 3度目の五輪に挑む日本のエース高橋大輔は、今シーズンに入る前から、気持ちがどこか"逃避"しているかのようだった。ソチ五輪に向けての熱く強い気持ちを"醸成"できないまま、グランプリ(GP)シリーズの初戦だったスケートアメリカに出場。結果はショートプログラム(SP)5位、フリー4位の総合4位に終わる惨敗だった。昨年の中国杯でも後塵を拝した後輩の町田樹に、再びお株を奪われる羽目になった。GP初戦からのつまづきに、さすがの高橋も自信をなくしてしまったという。

「今シーズンは自信がない自分や、気持ちが入っていない自分がいて、そのためにシーズン初戦のスケートアメリカで自信のない演技をしてああいう結果に至ったので、今大会はパーフェクトな演技をして自信を取り戻したい。現状は厳しいが、優勝を目指していく。調子はいいので気持ちで負けないように前向きに攻めていきたい」

NHK杯で優勝、シーズン序盤の不調を乗り越え充実した表情を見せる高橋大輔NHK杯で優勝、シーズン序盤の不調を乗り越え充実した表情を見せる高橋大輔 NHK杯直前の記者会見でこう語った高橋の表情はどこか吹っ切れ、ピリッと気持ちが引き締まっているようにも見られた。それもそのはずだ。精彩を欠いたスケートアメリカ後、高橋は、昨シーズンからチーム高橋に加わったニコライ・モロゾフコーチにきつい言葉を浴びせられたのだそうだ。モロゾフコーチは、高橋にとって精神面をサポートしてくれる人物。叱咤激励や気持ちを奮い立たせてくれるコーチングで高橋の闘争心を導いているという。

「GP初戦と2戦目のこのNHK杯では意識がまったく違う。スケートアメリカが終わった後、ニコライからきついことを言われ、チームでのミーティングでも、オリンピックに対する自分の気持ちが足りないことをがつんと言われた。それは、自分でも気づいてはいたんですが......。だから、アメリカから帰ってきてからは気持ちが切り替わり、ジャンプにフォーカスして練習に打ち込んできた。ニコライから言われた言葉ですか? それは痛いところをつかれたというぐらいで、あまり深いところは聞かないでください(笑)」(高橋)

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