夢の舞台を目指す羽生結弦、「五輪シーズンの戦略」とは? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

「全日本選手権で優勝できる力をつければ、必然的に五輪でもいい成績を収められると思う。そのためには選考の対象になるGPシリーズでいい結果を出して、全日本選手権に余裕を持って臨みたいという気持ちもあります。とにかくすべての試合を通して、自分の精一杯の力を込めて演技をしていくことが大切だと思います。高橋選手の公開練習の映像を見ても、小塚選手のアイスショーでの滑りを見ても、仕上がりが早いなという印象です。僕自身はまだまだ上がりきれていないところもあるので、もっともっと仕上げなくてはいけないなと思います。試合で必要なのは、気合いとタイミングで、そこに運も絡んでくると思います。その運をドンドン高めていって、自分の実力となるように、精一杯練習していきたいです」

今季、全日空と所属契約を結んだ羽生。海外遠征の渡航時などにサポートを受けている今季、全日空と所属契約を結んだ羽生。海外遠征の渡航時などにサポートを受けている 一方、ショートプログラム(SP)については、当初は曲を変えるつもりだったが、いろいろと迷った結果、結局昨シーズンと同じ『パリの散歩道』になった。これは、昨シーズン、95点台の世界歴代最高点を連発したプログラム。昨年よりレベルアップさせて、さらなる高得点を狙いたいという目標もあるが、同時に、「SPに余裕を持つことでフリーの完成度を高めることに集中できるというメリットも大きい」と言う。

 SPに関しては、昨シーズン前半戦は完成度の高い演技が出来たにもかかわらず、「世界選手権でケガをして崩れてしまったのが悔しかった」と言う羽生。だからこそ、「まだあのプログラムは本当に完成はしていない」と思い、今年のアイスショーで滑っていたのだ。

「あの時は4回転を跳ばなかったけど、お客さんに見てもらうことをすごく意識したプログラムでした。それが生きていて、練習では表情を柔らかくしながら、ジャンプに集中できている」

 SPの曲を変えないことで磨きをかけ、その成果を十分に発揮できそうな今シーズンは、フリーの『ロミオとジュリエット』をどこまで完成できるかがポイントのひとつだろう。五輪シーズンでの羽生結弦の進化が、楽しみになってきた。

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