夢の舞台を目指す羽生結弦、「五輪シーズンの戦略」とは? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 羽生は、バンクーバー五輪の翌シーズン(2010-2011)にジュニアからシニアに昇格し、グランプリシリーズに挑戦。2011年の四大陸選手権では銀メダルを獲得した。それ以降、2012年3月の世界選手権で銅メダル獲得、2012年12月の全日本選手権初制覇と、着々と実績を積み上げてきた。

 大切な今シーズン、彼はフリープログラムの曲に2シーズン前と同じ『ロミオとジュリエット』を選んだ。かつての曲はクレイグ・アームストロングの作曲だったが今回はニーノ・ロータ作曲。

「ロミオとジュリエットは小さな頃から『この曲でやってみたい』と思っていた曲ですし、東日本大震災があった後のシーズンに、全国各地を転々としながらアイスショーで滑っていた頃の曲でもあるので、僕にとって2年前のプログラムはすごく大切なもの。今回は曲調も違うから、違った雰囲気になると思う。今しか出来ない最高のロミオとジュリエットを、シーズンを通してやってみたいと思っています」

 羽生は、今季の構成では昨シーズンの4T、4Sという順番を逆にし、4Sを最初に持ってきてその後に4Tを入れる構成にした。昨シーズン、得意な4Tは決められても4Sをなかなか決められなかったため、「自分にとって一番やりやすいのは4S-4Tの順番」と思い、変えることを決めていたのだ。今年2月の四大陸選手権の後にその決断をしていたが、3月の世界選手権では大会前のインフルエンザや膝のケガの影響もあり、実行できずにいたと言う。

「トーループに余裕が出てきたので、練習でもサルコウにある程度気持ちを入れられるというか......。だからサルコウを抜いて4Tを2回というのは考えなかったですね。それは得点的にも、サルコウを4回転にしておくと後半でも3回転トーループ(3T)を入れられて、トリプルアクセル(3A)からのコンビネーションジャンプに3Tをつけられるし、3Sも跳べるので。4回転を複数入れるのは何人もやっているけど、4Sを跳べる選手は数人ですし、せっかく(4Sというジャンプを)持っているのだから、その武器を活かそうと思いました」

「僕の場合、パトリックや高橋大輔選手に、プログラムコンポーネンツで勝てるとは思わないので......。その面では点数もしっかり計算して、いいジャンプを跳んでいくしかないと思っています。もっともっと表現力を磨いていこうとは思っているけど、しっかりジャンプを決めることこそが僕のスケートじゃないかな、と思っていますね」

 今年は上半身の体幹部を強化して、体が若干大きくなってきた。トレーニングも順調のようだが、五輪代表の座を勝ち取る争いの厳しさも十分承知している。

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