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「萩野世代」が日本水泳界の未来を変える (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao

 そんな萩野を平井コーチはこう評価する。「元々才能があって努力を苦にしない選手だが、五輪の銅メダルがキッカケになって最近の大会では泳ぐ度に自信をつけている。また、それが彼の才能をさらに引き出していると思う。高校時代まで指導をしていた前田覚コーチのメニューで、若い時から高い(レベルの)スピードの練習を繰り返してきた、積み重ねの賜物だと思うが、『こんな練習をやらせて大丈夫かな?』と思うくらいのハードな練習を、ものともせずやれるのは彼の能力が高い証拠。それでいて性格もおおらかだから、本当に世界のトップ選手のひとりだと思う」

 将来的にみれば世界で狙う個人種目は個人メドレーと背泳ぎになるだろうが、8月の世界選手権ではリレーを含めて8種目に出場する可能性もある。高い意識を持つ萩野にとってこの日本選手権は、世界のトップスイマーに挑む第一歩になった。

 そして、今回の日本選手権では萩野だけでなく、同世代である山口と瀬戸の泳ぎも、将来の日本水泳界にとって明るい材料となった。

 今回、五輪メダリストらはメダル獲得種目に出場すれば世界選手権代表内定という条件もあって、まだ誰もが調整中といえる状態で迎えた。

 そんな中でも昨年9月に世界記録を樹立して以来、記録と現実のギャップでいい泳ぎが出来ていなかった平泳ぎの山口が、萩野から刺激を受けて200mでは派遣標準記録を突破する2分09秒31で初優勝を果たした。

「最近は前半の100mを1分3秒5とか1分4秒とか、かかっていたけど、今回は積極的に1分2秒台でいけた。世界記録を出した時に比べれば60%くらいの泳ぎだが、久しぶりにスッキリするレースが出来た」と、復活への手応えをつかんだ。

 また昨年秋以降はワールドカップや短水路世界選手権で目覚しい結果を残していた瀬戸は、同学年の萩野に大きく水を開けられたものの、個人メドレー2種目では派遣標準を突破して2位。世界選手権代表を決めた。

「自分は長水路だと最初の25mでスピードが上がって、そこから落ちていくタイプ。ずっと短水路(25mプール)で練習していたが、これからは長水路で練習ができるので改善できると思う。萩野は練習もすごいが、自分ももっと練習が出来るようになれば強くなると思う」とライバル心をのぞかせた。

 今大会、萩野が残した5冠という素晴らしい結果は、同世代の山口、瀬戸をこれまで以上に刺激して、今後の成長を促進させるものになっただろう。

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