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「萩野世代」が日本水泳界の未来を変える (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao

 だが、この大会12レース目となる最終日の200m背泳ぎ決勝では、積み重なった疲労もあったのか、少し消極的な泳ぎになってしまった。スタートで入江を少しリードしながらも、突き放せなかった。

 そんな隙を入江は見逃さず、50m折り返しで萩野をリード。ターン後のバサロの差を、高い泳力で補うという展開に持ち込んだ。結局3月のニューサウスウェールズ州オープンでふたりが競り合った時よりも1秒以上も遅い記録での勝負となり、満を持してスパートをかけた入江に突き放される1分56秒11で2位になり6冠達成はならなかった。

 勝った入江は「お互いに勝負を意識して消極的なレースになってしまった。勝ったとはいえタイムはこんなに遅いので、夏に向けて切り換えてやるしかない」と表情を緩めなかった。一方、萩野は「このタイムなら3番もありえたから。派遣標準を突破して2位という最低限のことは出来た」と苦笑しながらもこう続ける。

「アップの時は『いけるかな』と思ったけど、全体的に力んでしまって、いい泳ぎの時とはテンポがズレてしまった。それが最後の50mに出てしまったけど、そのあたりが目標とするロクテ選手やフェルプス選手との差かなと思います。最後の最後でモヤモヤしてしまったのが自分らしいのかなと思うけど、本当の怪物は最後まで活躍するから、まだ僕はポンコツですね。多種目に挑戦して得ることも多かったけど、100mで入江さんに勝てたのはたまたまだと思うし、1種目1種目の大切さも最後にわかったから。これからは1種目1種目に集中してやりたいですね」

 高校卒業後は海外留学を希望していた萩野だったが、選んだのは東洋大に進学し、北島康介や寺川綾らをメダリストに育てた平井伯昌コーチの下、指導を受け競技を続ける道だった。

 そして平井コーチは、大学生のほかに『チーム平井』として、北島、寺川、松田らも指導している。そのため萩野は、トップ選手の泳ぎを近くで見る機会も多く、「素晴らしい選手の泳ぎを見て、(自分も)速くなっていると思うので、それを400m個人メドレーに生かしていきたい」と大会中に語っていた。苦手だったバタフライや平泳ぎも、チームメイトの加藤ゆか(ロンドン五輪4×100メドレーリレーで銅メダル)や北島、山口などの泳ぎを参考にして改良しているという。

 また冬の間からその『チーム平井』の練習に参加して、3月のニューサウスウェールズ州オープンでは、3日間でリレーを含めて7種目に出場するというタフな大会も経験している。

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