【水泳】北島康介が復帰。
「チーム平井」が生み出す競泳界の新たな波 (3ページ目)
「康介がUSC(南カリフォルニア大)へ行って、なるほど、こういう(社会人も入っている)大学のチームもあるのかと思いました。だからロンドン五輪の後、康介と話した時に、『先生のところはこれからどうするんですか』と聞かれて、『社会人も混ぜて、USCでやっているような感じでやりたいんだ』と答えたんです」
2004年アテネ五輪の頃、北島康介が現役でいるうちに、次の選手を育てておかなければいけないと考えた平井は、当時中学生だった上田春佳を自分のチームに入れて一緒に練習をさせて、北島や中村礼子には「お手本になるように頼むぞ」と声をかけていた。そして今、メダリストになった上田や寺川、加藤などが、若い選手のお手本となる番だ。
同時に平井は、大学の理解や東京SCの協力が得られ、自分の体力に余裕があるなら、社会人だけでなくジュニアの強化もしてみたいという。
「そのためにも、コーチの育成を考えていかなくてはいけない。だから、チームに若いコーチも入れたいんです。でも、それ(人件費など)をすべて東洋大に任せるわけにはいかないから、スポンサーを探すなど資金集めもしなければいけない。それとともにコーチの社会的地位や立場を高めていかなければいけない。
日本代表・前ヘッドコーチの鈴木陽二さんには、『まずは選手を食わせるようにしなければいけないが、俺の時代はそこまでだ。次は頼む』と言われたんです。コーチがプロとして自立して評価されるためにも、コーチングとはすばらしいものだというのを、知らしめていかなければいけないですね」
今、平井はプロコーチとして、社会人選手からはコーチ料を受け取っている。当然の報酬でもあるが、そのお金のほとんどはジュニアの強化に回している状態だ。そして、プロの自覚があるからこそ、彼は「選手に結果を出させなくてはいけない」と考える。
「康介がアメリカへ行った後、彼がどうなるか心配だったけど、2010年のパンパシ(パンパシフィック選手権)で康介は記録を伸ばした。その時は正直、寂しい気持ちにもなりましたね。『勉強が足りなかったのかもしれないな』と。デーブ・サロ(南カリフォルニア大学コーチ)のやり方を見習って、練習を変えなければいけないと考えたんです。それが(寺川)綾と(加藤)ゆか、(上田)春佳の指導に生きたと思いますし、今後、ナショナルチームでも新しい練習メニューを実践してみようと考えています」
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