別次元の戦い。羽生結弦と髙橋大輔が生み出す頂点への推進力
2012年の全日本選手権を制したのは初優勝となる羽生結弦。2位に髙橋大輔、3位に無良崇人が入った。 NHK杯とGPファイナルに続く今季3度目の髙橋大輔と羽生弦結の対決は、過去2戦以上にハイレベルなものになった。
12月21日のショートプログラム(SP)、最初に滑ったのは髙橋だった。GPファイナルと同じ演技構成の冒頭、4回転トーループは回転不足でGOE(出来ばえの加減点)も減点されたが、その後は立て直す。そして終盤は持ち前の表現力の高さを発揮し、ステップでは7名の審判全員からGOEで最高の3点の加点をもらう圧巻の演技。4回転を成功したGPファイナルの得点には及ばないものの、88・04点を獲得してトップに立った。
「4回転は上がった瞬間にヤバいと思った。これまでだったら転倒をしているところだったが、ダウングレードながらも4回転と認められて降りられたのは、少しずつ自分のものになっているということだと思う。この緊張感の中ではまぁまぁの演技ができました」と、髙橋は笑顔を見せた。
一方、昨年のこの大会ではSP最終滑走者となりプレッシャーでメロメロになっていた羽生は、今季の成長ぶりを遺憾なく発揮した。
演技前の6分間練習は出来が悪く、「緊張感と不安に襲われた」という羽生だったが、最初の4回転トーループを完璧に決めると勢いに乗った。各要素を丁寧にこなし、ジャッジのGOEスコアは、ほぼ2点と3点で埋められる上々の出来。
演技の迫力が、そのままリンクを支配する緊迫感となって観客席まで伝わってくるような密度の濃い2分40秒間。GPシリーズで連発した世界歴代最高得点を(国際大会ではないため)非公式ながらもさらに上回る97・68点を出して髙橋を抜きトップに立った。
「去年、最終滑走でダメだったイメージも残っていたので緊張したし、6分間練習も今までにないくらいダメだったので......。得点にはビックリしているが、緊張している中でもああいう演技ができたのが嬉しい」
2週間前のGPファイナルでは、連続ジャンプで無理をして跳んだ後半のジャンプで転倒するというミスを犯したが、それを除けばGPシリーズの初戦と第2戦から確実に得点を伸ばす結果。昨季は失敗を繰り返していたSPを、新たな武器とするまでに自信を深めた。
SPで9・64点の大差がついたふたりの戦いは、翌日のフリーでは最終組第1滑走者の髙橋が攻めた。
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