【ロンドン便り】五輪公式マスコット、予想に反して人気急上昇中

  • 藤井重隆●取材・文 text by Fujii Shigetaka
  • photo by Fujii Shigetaka


 マスコットのストーリー設定はこうだ。イングランド北西部の工業の町ボルトンの製鋼所で、五輪スタジアム建設に携わり定年退職した老人が、スタジアムに使われた鉄筋の一部で孫のために作った人形が光を浴びて命を宿し、人々を五輪へと導くというもの。神話や伝承の物語のキャラや動物ではなく、あくまでも架空の生き物というわけだ。

 目はカメラのレンズ。額はロンドンのタクシー「ブラックキャブ」のライトを表しているほか、ウェンロックの山の字になった頭の先は表彰台と五輪スタジアムを象徴し、手首に着けられているブレスレットは友情と五輪の輪を示しているなど、産業革命の国ならではの発想も垣間見える。

 マスコットの公式オンラインサイトでは、着せ替え大会なども行なわれており、11万以上の人が独自のデザインを楽しんでいる。ロンドン五輪で販売される公式グッズは約1万点と、過去最大規模になることが予想されており、五輪組織委員会(LOCOG) はグッズ販売で10億ポンド(約1210億 円)を超える売上高を見込んでいる。この売上目標達成のためにも、大会期間中に競技場各所で登場するウェンロックとマンデビルの姿にも注目が集まる。

 ロンドン五輪組織委員会のセバスチャン・コー会長は、「我々は子どものためのマスコットを作った。マスコットは若者とスポーツを結び、五輪やパラリンピックの物語を伝えてくれる」と自信を深める。一方、ロンドン市長のジョンソン氏も、「ウェンロックとマンデビルはロンドン五輪を体現し、人々に強烈な印象を与えるキャラだ。街に設置されたマスコットの像は市民や観光客のツアーガイドとなってくれることだろう」と目を細めた。

 発表当初は「五輪公式大会マスコット史上最低の造形」と言われることもあったが、短編アニメ4部作が作られるなどして予想外の人気ぶり。見れば見るほど愛着がわいてくる、ということのようだ。映画では、おちゃめな性格を持つマスコットと共に英国代表選手も登場し、映画の最後に「五輪の準備は整った」とうたっている。五輪とパラリンピックの全日程が終了する頃には、すっかり馴染みのあるマスコットに成り代わっている事だろう。

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