【陸上】義足のジャンパー中西麻耶、パラリンピック金メダルへのワンピース

  • 星野恭子●文・取材 Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

ロンドンパラリンピックに向けて課題をひとつ見つける大会となったロンドンパラリンピックに向けて課題をひとつ見つける大会となった 大阪・長居陸上競技場で、6月2日から2日間の日程で開催されたジャパンパラ陸上競技大会で、女子走り幅跳び・片下腿切断などの部を制したのは、日本記録保持者の中西麻耶だった。だが、記録は4m64cmと自己ベストに32cm及ばず、中西は「自分を信じ切ることができなかった」と試合を振り返った。

「体調は良かったし、直前練習ではいい感じだったので、『1本目からいいジャンプをしよう』と思っていたんですが。精神面もしっかり合わせて、早くみなさんにいいジャンプをお見せしたいです......」

 あと13cmに迫っている世界記録更新という高い目標を持つ中西にとって、今日の結果はふがいなかったに違いない。

 不運もあった。中西は今大会、短距離走種目にもエントリーしていたが、走り幅跳びのスタートが約1時間遅れた関係で、200m出場のため幅跳びの2本目の試技後、中断を余儀なくされた。

 さらに、「3本目の試技はパス」と見なした競技委員に対し、「3本目から再開」と思っていた中西。結局、中西が5本目と思って飛んだジャンプが最後の試技となり、抗議したが認められることはなかった。

 4本目(実質は5本目)の試技で出した4m61㎝で逃げ切り優勝はしたものの、不完全燃焼で競技を終えることになってしまったのだ。

「(大会前からの)いろいろなストレスもあって競技に集中できていなかった部分もあった。本当は自分が練習してきたことを、コーチの言葉を、信じなければいけない。信じればいいんだって分かっていたけど、今日はそれが足りなかった......」

 2009年夏から練習拠点をアメリカ・サンディエゴに移している中西は今、アメリカ人のアル・ジョイナー氏に指導を受けている。彼は1984年ロサンゼルス五輪三段跳びの金メダリストで、コーチ転向後は五輪、パラリンピックのメダリストを何人も育てている。

 ジョイナー氏は今大会の中西のジャンプを受け、こうコメントした。

「今日は少し悪い条件が重なっただけ。私はマヤがもっといいジャンプができる選手だとわかっている。実際、追い込まれてからの4本目(実質は5本目)、マヤは見事なジャンプで盛り返した。今日の結果は悪くない。今の彼女はまぎれもなく、世界でトップクラスのジャンパーだから」

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