【体操】『新戦力』田中理恵の誓い「(北京の)5位よりは上にいきたい」

  • 椎名桂子●文 text by Shiina Keiko
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

田中理恵は兄の和仁(右)、弟・佑典(左)とともに見事ロンドン五輪出場を決めた田中理恵は兄の和仁(右)、弟・佑典(左)とともに見事ロンドン五輪出場を決めた 5月4~5日に行なわれた第51回NHK杯体操の結果、体操女子のロンドン五輪代表は、田中理恵(日本体育大学研究員)、美濃部ゆう(朝日生命)、寺本明日香(レジックスポーツ)、鶴見虹子(日本体育大学)、新竹優子(羽衣国際大学)の5名に決定した。

 4月7~8日に行なわれた第66回全日本体操競技選手権大会における上位24名の選手が出場資格を得たNHK杯だが、五輪の切符をめぐる上位の戦いには、まさに手に汗握るものがあった。

 その中でも田中は、4日間にわたりほぼ安定した演技を見せ、最終的には2位に7.500という差をつけての余裕のトップ通過となった。NHK杯優勝と代表入りが決定した瞬間には涙を見せた田中だが、試合後の記者会見では終始笑顔で、女子代表選手の中の最年長らしく、落ち着いた受け答えを 見せた。これから五輪に向けては「自分らしい美しい体操で(点数を)引かれるところのない安定した演技をしたい」と自分の課題をしっかり見据え、いい演技ができず悔しい思いをしたという2011年世界選手権のリベンジを目指す。ダイナミックさと美しさが共存する田中の体操は、力を出し切れば世界でも輝く存在となるだろう。

 同じく五輪初出場を決めた16歳の寺本も、NHK杯の2日間ではミスもあり通過順位は3位となったが、スピードとキレのある演技は、五輪でも台風の目になってくれそうだ。

 しかし、残り3枠の争いは熾烈を極めた。

 手の甲の故障もあり、4月の全日本では7位と出遅れていた鶴見は、「今回はちゃんと練習ができているので、自分の演技ができれば代表入りはできると思う」とNHK杯前の会見で強気の発言をしていた。その言葉通り、今大会の鶴見の演技には気迫が満ちており、1日目で順位を6位まで上げ、5位との差も0.600までつめた。美濃部は逆に、点数を伸ばせず全日本3位から5位に後退し、1日目終了時の順位は、新竹4位、美濃部5位、鶴見6位。0.900差の中に3人が入っており、サバイバルレースの様相となった。

 すべてが決まるNHK杯2日目、1種目目の跳馬で鶴見が3人の中では最高得点を獲得しさらに差を縮める。そして、2種目目の段違い平行棒でも鶴見は田中に次ぐ得点をあげさらに追い上げを見せると、新竹に脚がバーにあたるという大きなミスが出る。その結果、2種目終了時点で美濃部4位、鶴見5位、新竹6位となる。

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