【柔道】覇気なし、運なし、力なし......。
鈴木桂治ら3候補惨敗で五輪に暗雲

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Kitamura Daiju/AFLO SPORT

 3大会連続の五輪出場に「黄信号」が灯り、家族や関係者のショックもいかばかりか。2週間後の全日本選抜体重別選手権に出場しなければ、五輪出場は消えることになる。

 もっとも、より歯がゆいのは、22歳の上川のふがいなさである。一昨年の世界選手権覇者。素質もサイズもあるのに、攻め手がまったく遅い。闘志が表に出ない。準々決勝の百瀬優(旭化成)戦では寝技、締め技を決められそうになり、防戦一方で旗判定により敗れた。上川はぼそぼそと漏らす。

「何が悪かったか、わからない。(負けは)自分が弱かったからです。まだオリンピックの望みが残っているのなら......。頑張って、福岡(全日本選抜体重別選手権)で勝つしかないです」

 27歳の高橋も準々決勝で、石井に大外刈りを食らった。一本負け。こちらは、完敗にさばさばしていた。

「気力でも体力でも技術でもすべてで劣っていた。あと百回やっても勝てない。この結果で五輪代表がどうのこうの言えない」

 ちなみに優勝は、重量級の不振を象徴するかのごとく、本来90kg級の加藤博剛(千葉県警)だった。ロンドン五輪選考外の伏兵である。重量級以外の選手が同選手権を制したのは、1972年の関根忍(中量級)以来40年ぶりのことだった。

 どだい五輪の出場決定のシステムがいびつなのだ。国際柔道連盟(IJF)による世界ランキング22位以内という条件があるから、候補者が限定されてしまう。どうしても鈴木(世界ランキング20位)、上川(同11位)、高橋(同14位)の3人から、誰かを選ばないとならない。

 すべては全日本選抜体重別選手権(5月12日、13日・福岡)の結果次第となった。もう五輪に誰かを出すので精いっぱいである。優勝どころか、メダルすら、さっぱり見えてこないのである。

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