【水泳】メダルの可能性十分。15歳・渡部香生子、進化の秘密 (2ページ目)

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • photo by Nakanishi Yusuke/AFLO SPORT,Kitamura Daiju/AFLO SPORT

15歳で五輪行きの切符を獲得した渡部香生子。4月から高校生になったばかり15歳で五輪行きの切符を獲得した渡部香生子。4月から高校生になったばかり
 奇しくも、表彰式では、今や一児の母である岩崎恭子さんがメダルを渡部に渡し、なぜか、もらい泣きする。

「私と違って、プレッシャーの中で結果を出したことは立派だと思う。落ち着いた泳ぎでびっくりした。伸びシロは大きい。ロンドンが楽しみです」(岩崎恭子さん)

 進化のヒミツは負けん気の強さと素直さにある。泳ぎの柔らかさにある。もとは個人メドレーがメインだったけれど、中学1年の秋に右肩痛がきっかけで平泳ぎに転向した。昨年、早くもブレイクし、ジャパン・オープンで平泳ぎ3冠に輝いた。世界ジュニア選手権では200m平泳ぎで優勝した。

 実は昨年秋から筋力強化に努めた。だがパワー頼りの泳ぎは繊細な動きとはマッチせず、かつての手足のバランス重視に戻した。麻積隆二コーチは言う。

「抵抗の少ない泳ぎを追及してきた。水中での推進効率は一番いいのではないか。いろんな経験をして、精神的にも随分、成長したと思います」

 もちろん素材がいいのだろう。父は高校時代にボクシングで鳴らし、母が元スイマーというスポーツ一家に育った。何より、若さが魅力である。平泳ぎ歴としては、まだ2年半なのだ。どこまで伸びるのか。

 世界をみれば、この種目には昨年の世界選手権金メダルのレベッカ・ソニ(米国)が君臨し、あとは横一線である。鈴木を抜けば、おのずと表彰台が見えてくる。

 渡部の涙が乾く。ロンドンの目標を聞かれると、15歳に笑顔がパッと浮かぶ。

「オリンピックに向け、頑張って練習して、表彰台を目指します」

 ピカピカの高校一年生(東京・武蔵野高)。過度な期待は禁物だけれど、どうしても岩崎恭子の再現をロンドンで見たくなる。

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