【水泳】寺川綾、2大会ぶり五輪!
4年分の「涙」と身につけた「たくましさ」

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 藤田孝夫●撮影 photo by Fujita Takao

日本新記録で2004年アテネ以来となる五輪出場を決めた寺川綾日本新記録で2004年アテネ以来となる五輪出場を決めた寺川綾
「仮想ロンドン五輪」のファイナルだった。4月5日の競泳日本選手権の女子100m背泳ぎ。寺川綾はロンドン五輪本番を想定し、朝から同じような行動をとった。

 実は、とヒロインは打ち明ける。「五輪では口から心臓が飛び出すくらいに緊張するから」と。19歳で臨んだ2004年アテネ五輪は200mのみの出場で8位に終わった。2008年北京五輪選考会では重圧の前に力を出せず、五輪キップを逃していた。

 だから、わざと自分に五輪舞台と同じような緊張を強いた。プール入場の際、いつものような笑顔はない。五輪派遣標準記録(1分0秒48)は当然として、目標の記録は五輪表彰台の条件の「58秒台」だった。

 好スタートを切った。スタート台に174cmの体を小さく丸めこんで、より大きな反動をつけて勢いよく飛び出す。課題としていた「浮き上がり」もスムーズにいった。4コース。青色キャップの寺川が頭ひとつ前に出る。あとは安定したフォームでリズミカルにピッチを上げていく。

 どこかスケールが大きくなった。身長が伸びたかと錯覚するほど、腕のかきが伸びやかになった。肩甲骨の使い方がうまくなったのだろう。前半50mを28秒82で入る。自身の持つ日本記録より0秒04速いラップだった。

 寺川の述懐。
「予選、準決勝と前半のテンポが速くて、リラックスしきれずに泳いでいた。だから、決勝では、落ち着いて大きな泳ぎを意識していたんです」

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