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[2011年12月25日(日)]

【フィギュアスケート】 逆境を乗り越え力強さを増した羽生結弦。仙台出身の17歳が世界へ羽ばたく

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

全日本選手権で3位になり、世界選手権出場をほぼ確定させた羽生結弦

 あれほど緊張して硬くなり、持ち前のしなやかな滑りを失った羽生結弦の演技は初めて見た。12月23日の全日本フィギュアスケート選手権、男子ショートプログラム。最終滑走者だった羽生は、直前の6分間練習では成功していた最初の4回転+3回転が、3回転のみになってしまい、コンビネーションジャンプをつけられなかった。

 次のトリプルアクセルから何とか立て直したが、滑りは小さくなって伸びを欠き、しなやかに情感を表現する本来の滑りは見られないまま。本人も「あんなに硬くなったのは初めてですよ」と苦笑するほどだった。

「これまでショートプログラムの演技順は1番目か2番目だったので、いつもならもう終わっているころになっても自分の順番がくるのを待っている時間に対応できず、ちょっと緊張してしまいました。最初のジャンプの失敗でだいぶ動揺しました」

 それでも、最後のジャンプを連続にしたことに「冷静さがあった」と自分で評価したが、スピンでもレベル4を取れず、得点は74.32点。高橋大輔や小塚崇彦とは10~20点以上の差がついてしまい、わずかな差で町田樹にも届かない4位発進になってしまったのだ。

 だが、最後からふたり目の滑走となった翌24日のフリーでは、「ショートプログラムでは力を出し切れなかったから、まだ力は余ってる感じです。思い切りやりたい」と言っていた通りに、キレのある滑りを取り戻した。


 2010年の世界ジュニア王者になった羽生は、同年の全日本選手権は4位だったが、2011年2月の四大陸選手権ではアメリカ勢や小塚を抑えて2位に食い込んだ。彼の武器はしなやかな動きと情感あふれる表現力、そして軽やかに決める4回転ジャンプの完成度の高さだ。 


 大震災のあと、「このままスケートをやっていていいのか」と悩んだ時、地元仙台で「応援してます。頑張ってください」と声をかけてくれた人がたくさんいた。その気持ちに応えたいという強い思いもあった。逆境を受け入れ、羽生の演技に力強さが増した。

 小塚と高橋が演技を終えてから登場した24日のフリー。羽生には勢いがあった。スピードに乗った滑りで最初の4回転トーループを成功させると、トリプルアクセル、3回転フリップを余裕を持って飛び、その後の3つの連続ジャンプも確実に成功させた。

 昨季までのしなやかさとキレに、力強さを加えた演技。最後のジャンプだった3回転サルコウこそ1回転になってしまったが、フリーではトップとなる167.59点を出し、合計で2位の小塚に約9点差まで迫る241.91点で3位。2012年3月にフランスで開催される世界選手権代表の座をほぼ確定した。

「GPファイナルでもフリーでは4回転も決まってすごく良かったから、その経験が自信になりました。世界選手権は絶対に(出場権を)つかみたかった大会。そこで戦うためにも今季は1度しか決めていないショートプログラムでの4回転を決められるようにしたいし、フリーでは何度もミスしている3回転サルコウの失敗をなくさなければいけないし……。それに4回転もフリーで2回入れられるようにしたい」

 こう話す羽生は、今回フリーでは高橋と小塚を上回ったことは自信になるが、ふたりは「まだまだ雲の上の存在」だという。だが、「ふたりが絶頂期のうちに追いつけるようにしたい。まだまだ足りないところはあるが、それを克服するためにも、今年は震災も含めて色々な経験をしたから、それを活かせるようにしていきたい」とも言う。

 大震災で練習拠点を失い、アイスショーに積極的に出演したことも、今はプラスにできたととらえている。

「体力がついたと思うし、狭いリンクや照明が暗いなかでも4回転を降りられて自信がついた。お客さんがたくさんいる試合形式の中で4回転を一番多く跳んでいるのは僕だと思いますから」

 しなやかな少年から、大人のスケーターへと脱皮しようとしている羽生は、初めての世界選手権を経て、また大きく変貌してくれるに違いない。日本男子フィギュアにこれまでとは違うタイプの選手が世界へ羽ばたけば、日本はフィギュア王国へまた一歩近づくことになるはずだ。

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