[2011年10月14日(金)]
【インタビュー】美しきヒロインの素顔~栗田佳織(少林寺拳法)
- 脊山麻理子●インタビュー interview by Seyama Mariko
- 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro
栗田佳織(少林寺拳法)
「力愛不二」の精神で自分に自信を持って生きたい
『脊山麻理子のスポーツのある風景』(10月13日配信)で紹介した少林寺拳法拳士の栗田佳織。切れ味鋭い技を繰り出しながら鮮やかな演武を披露し、日本体育大在学中には日本チャンピオンに輝いた。大学卒業後は、少林寺拳法の魅力を多くの人に伝えたいという思いからタレント活動も始め、少林寺拳法の普及活動に日々奔走している。
少林寺拳法の楽しさを
知ったのは、最近のこと
脊山 こんなに可愛らしい方が、蹴りやパンチを繰り出す姿には驚きました。どういうきっかけで少林寺拳法をやるようになったのでしょうか?
栗田 私が小学校3年生のときに、ふたつ下の弟が道場に通うことになったのですが、弟が「お姉ちゃんが一緒じゃないと嫌だ」と泣くので、両親から「おまえもやれ」と言われて(笑)。最初は、単なる”付き添い”だったんですよ。だから、うまくなろうとか、そうした向上心もまったくありませんでした。
脊山 それから、少林寺拳法の楽しさを知って、のめり込むようになったのはいつ頃からですか?
栗田「楽しい」と感じるようになったのは、本当に最近です。それまでは、道場に行くのが当たり前というか、習慣でした。それが、大学(日本体育大)に入って、大会で優勝したりして、少林寺拳法の楽しさがわかったんです。ひとつの道場だけではわからなかったことが見えてきて、視野が広がりました。
脊山 それまで通っていた道場と大学とでは、何が違っていたのでしょうか?
栗田 大学に入る前まで通っていた道場は、週2回で「年齢に関係なく楽しくやりましょう!」というところだったんです。それが一転、大学の部活は週6回みっちり活動していて、上下関係がとても厳しい世界でした。まさにスパルタですよ。それまでとのギャップが大きくて、入学した当初は泣いてばかりで、完全にホームシックにかかっていました(笑)。
脊山 武道の世界は、上下関係が特別厳しそうですね。
栗田 1年生のときなんて、本当に大変でした。少林寺拳法部の伝統になっている、おかしな仕事もありましたから。
脊山 どんな仕事ですか?
栗田『白タオル点検』です(笑)。先輩方が使用する真っ白いタオルを綺麗にする仕事なのですが、単に洗濯するだけではなくて、光に透かしながら、白いタオルについている小さい粒、いわゆる埃(ほこり)やゴミをすべて取り除かなければいけないんです。白いタオルには必ず小さい埃とかがついているものじゃないですか。でも、それが許されない。だから、1年生の間はその仕事が大半の時間を占めていましたね。日々泣きながら、睡眠時間を削ってやっていました(笑)。それでも、先輩たちからは毎日「白タオル、汚い!」と叱られていましたから、つらかったですよ。他にもいろんな”決まり事”があって、精神的にも、肉体的にも、かなりもまれました。
少林寺拳法という武道に
いろいろ教育してもらった
栗田 毎日、相当へこんでいました。でも、自分で日体大に行くと決めたので、そこから逃げ出したら両親に顔向けできないな、と思っていました。特に母親は大学進学が決まったときに喜んでくれたので、余計に泣き顔は見せられません。だから、家族にはつらいことは一切言わなかったですね。「大丈夫だから安心して」と。
脊山 それでも、栗田さんは経験者ですから、技術面では自信を持って入部されたのではないですか?
栗田 はい。でも、入部してすぐに、天狗になっていた鼻をポキッと折られました。経験者だろうが初心者だろうが、まったく関係ありませんでした。経験している分、いろんな技は知っていましたけど、基本的なことから”日体流”というものがあるので、イチからのスタートでしたね。
脊山 技術的な指導も厳しいのですか?
栗田 厳しかったですね。1年生が最前列に並んで、後ろで先輩たちが目を光らせているんです。厳しくチェックされて、先輩から注意されたことは絶対でした。でも、そういうことを重ねていって、変な癖も直りましたし、だんだん”日体流”の形になっていくんですよ。
脊山 得られるものも大きかったわけですね。
栗田 大きいですねぇ。そうした指導がなかったら、大会でタイトルを獲るようなこともなかったと思いますから。
栗田 1年生のときには関東大会の予選すら通過できなくて、3年生の全日本学生で1位になったんですけど、「やっとかぁ~」というのが正直な気持ちでした。それまで、ずっと先輩のスパルタ指導を受けてきたんで(笑)。そういう意味でも、「これからがスタートだな」と思いましたね。
脊山 翌年の大会でも1位になって連覇を達成しましたが、栗田さんにとって、少林寺拳法とはどんな存在ですか?
栗田 考えたことなかったですね……。ただ、少林寺拳法をやっていなかったら、今の自分はいなかったと思います。少林寺拳法という武道にいろいろと教育してもらいましたから。まさに、少林寺拳法あっての自分だと思います。
少林寺拳法は
れっきとした日本の武道
脊山 そんな少林寺拳法のいちばんの魅力はどんなところですか?
栗田 空手や柔道にしてもそうなんですけど、他の武道の指導というのは、技術的なことがメインじゃないですか。でも、少林寺拳法の指導は、技術的なことにプラスして、少林寺拳法を始めた開祖の教えを受け継いでいくんですよ。精神と肉体と両方を鍛えるというか、ただ鍛えればいい、強くなればいい、ということではないんです。だから、私も続けてやってこられた。そうじゃなかったら、おそらく辞めていたのではないでしょうか。
脊山 いろんな教えの中で、好きな言葉などはありますか?
栗田「力愛不二(りきあいふに)」という言葉が好きです。力が伴っていない正義は無力で、逆に正義が伴ってない力はただの暴力でしかなく、正義のためには力もなくてはいけないし、力を使うには正義もないといけない、という教えがすごく好きです。
脊山 カッコいいですね。
栗田 自分に自信を持ちながら生きていきたいんです。「女だから……」と見下されるのがすごく嫌いなんですよ。大学のときも、男子がよく「女子じゃあ、こんなもんだろう」みたいなことをポロッと言うんですが、そのときも「何だと、このヤロー」と思っていましたから(笑)。でも結局、そういうひと言で自分の中の闘志に火がついたので、プラスにはなったんですけどね。
脊山 では最後に、今後の目標を聞かせてください。
栗田 一番は、少林寺拳法をもっと世の中に広めていきたいです。「力愛不二」の精神というと、ちょっと堅苦しく聞こえるかもしれませんが、噛み砕いて理解していくと、人生の教訓だったり、人として大切なことだったり、そういう教えがいっぱい含まれている武道なので、それを多くの人に知ってもらえたらいいな、と思っています。競技人口を増やしたいというより、みんなに身近に感じてもらいたいんです。あと、「中国の武道じゃないぞ!」ということを、声を大にして言いたいです。れっきとした”日本の武道”ですから!
脊山 まもなく大会が開催されるんですよね。
栗田 10月16日に横浜アリーナで行なわれる『かながわオープン大会』に出場します。大学4年生の大会から2年のブランクがありますが、まずはそこで結果を出したい。「少林寺拳法を広めたい」と言っている自分が弱かったら、説得力がないですからね。少林寺拳法は勝つことを目的に試合をやるわけではないんですけれども、これが少林寺拳法の演武だというのをしっかり披露したい。観戦に来られた人たちにも、他の選手たちとは”違う”というものを見せないといけないな、と思っています。




















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