大坂なおみ、世界ランク831位からどう上がっていく? 元世界1位ナブラチロワの見立ては (2ページ目)

  • 内田 暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki

【ナブラチロワが大坂なおみに下した評価は?】

 26歳に、母として立つ最初のグランドスラムの、センターコート。

 満席のスタンドを満たす熱気と注視を集めてボールを叩く大坂の姿は、ノスタルジアを喚起させた。コンパクトなテイクバックから、全力で右腕を振り抜き、フラットにボールを打ちぬく。破裂音を轟かせラケットから弾かれる驚異のスピードショットは、見る者の感嘆の声を誘った。

 ただ、ネットすれすれを超える超強打は、コーナーに刺さればウイナーとなるが、ミスと表裏一体のリスキーな賭けだ。そして、荒々しくも瑞々しいそのプレーは、テニスシーンに超新星のごとく現れた頃の彼女と重なった。

 かつて強打一辺倒だった才能の原石は、その後、経験豊かな指導者たちにより磨かれていく。フィジカルを鍛え、フットワークを学び、フォアハンドにはスピンをかけ、プレースタイルは洗練されていった。

 その大坂が、今回のガルシア戦では強打頼りになったのは、ラリーを組み立てる余裕がなかったからだろうか。

 試合前に「コートに立ちたくない」と思うほどの重圧を感じたガルシアは、その恐怖心をコーチたちに吐き出し、涙を流すことで、「リラックスできた」と言う。凛とした佇まいのガルシアもまた、17歳の頃から「次代の世界1位」との期待を集めてきた選手だ。

 その才覚を存分に放つガルシアのクリーンショットの前に、復帰から日の浅い大坂は、常に後手にまわっていた。観客を沸かせる強打の真相は、一発必中のショットに頼らざるをえない、焦りだったかもしれない。

 試合を通じ大坂は20本のウイナーを決めたが、アンフォーストエラーは25本を数える。見せ場は作るも、最終スコアは4-6、6-7。試合開始から1時間26分後......ファンの大声援に手を振り返しながら、大坂はロッドレーバーアリーナをあとにした。

 アメリカのテニス専門番組『テニスチャンネル』で解説を務める元世界1位のマルチナ・ナブラチロワは、ガルシア戦の大坂に対し「テニスの面だけ見ればB+。ただ、全体的にはC」と辛めの評価を与えた。

「ボールに追いつけていない。力まかせに打っていたのは、フィットしていないから。フィジカルが十分ではなく、態勢を崩しながら打つことが多かった」

 それが、"レジェンド"の見た大坂の現在地だ。

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