「大坂なおみのマスク」に日本の多くの
選手が沈黙。高橋美穂「残念です」

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko

「彼女の取った行動についてどう思いますか?」 

 先日、アメリカの『TIME』が「世界で最も影響力のある100人」を発表し、2年連続で選出された大坂なおみ。

大坂は全米OPに人種差別の暴力などで犠牲になった黒人の名前が書かれたマスクをして臨んだ photo by Kyodo News 大坂は全米OPに人種差別の暴力などで犠牲になった黒人の名前が書かれたマスクをして臨んだ photo by Kyodo News
 9月にニューヨークで行なわれた全米オープンには、警官や人種差別の暴力によって犠牲になった7人の黒人の名前をマスクに記して臨んだ。

 その理不尽な死を風化させてはいけないと全米オープンの初戦に連れ添った名は、女性救急救命士のブレオナ・テイラー。自室にいきなり押し行って来た警官にその場で射殺されたにも関わらず、この事件に関わった警官たちは誰ひとり罪に問われていない。

 以降、職質中に路上で抑えつけられて圧死させられたエライジャ・マクレーン。ジョギング中に白人親子にショットガンで撃たれたアマッド・アーバリー。白人男性との口論から胸を撃たれて絶命したにも関わらず加害者が無罪にされてしまった17歳のトレイボン・マーティン。警官に膝を首で抑えつけられて窒息死させられたジョージ・フロイド。軽佻(けいちょう)な交通違反の任意の質問の最中に恋人と子どもが同乗する車内に警官から次々に発砲されて殺されたフィンランド・カスティール、この警官もまた無罪にされている。

 決勝戦につけてきたマスクは、公園で模擬銃で遊んでいただけなのに同じく白人警官に撃たれて絶命した12歳の少年タミル・ライス。加害者の警官はまたしても不起訴になっている。勝ち進むことで鎮魂を続けた大坂はトーナメントを制し、「7枚どころではない」との言葉を残した。

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