ラグビーの名門・東福岡が復活の花園V。「自分では優勝できない」の葛藤を乗り越え、名将が決断した一大変革 (3ページ目)

  • 斉藤健仁●取材・文・撮影 text & photo by Saito Kenji

【東福岡が新スタイルで頂点】

 ディフェンスとキッキングを強化した成果は、花園決勝でも見てとれた。試合開始直後の1本目のトライはキックチャージから、12分後の2本目のトライは相手ラインアウトをターンオーバーしたことが起点。後半10分もSO(スタンドオフ)高本とわ(3年)が相手ディフェンスラインの裏にキックしたあとにCTB西柊太郎(3年)が押さえ、報徳学園に傾きかけた流れを引き戻した。

「また準決勝で敗退するのでは......言われていたプレッシャーはありました。ラグビーを変えて最初はうまくいかなかったこともあったが、この1年間、貫いてきた自分たちのラグビーを決勝で体現できた」(大川主将)

 ちなみにこの試合、東福岡は先発メンバー15人だけで戦い抜き、誰ひとり交代せずに頂点に立った。選手交代が当たり前となった現代ラグビーにおいて珍しい。

 それは、藤田監督が「先発したメンバーを変えるつもりはなかった。足が残っていましたね」と言うとおり、データで選手のコンディションを常に把握できていたからだろう。日本代表も使用しているGPS(全世界衛星測位システム)やコンディション管理アプリ「ONE TAP SPORTS」を昨年から取り入れ、選手の"見える化"に務めていた成果とも言える。

 今大会、試合全体の総得点は223点。新記録を打ち出した6大会前の花園は311点だっただけに、藤田監督は「見ていてつまらないでしょ」と苦笑いを浮かべた。しかし、トーナメントで負けない「ディフェンスの東福岡」で頂点に輝いた復活も、実に印象深いものだった。

【筆者プロフィール】斉藤健仁(さいとう・けんじ)
スポーツライター。 1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。2000年からラグビーとサッカーを中心に取材・執筆。ラグビーW杯は2003年から5回連続取材中。主な著書に「ラグビー『観戦力』が高まる」「世界のサッカーエンブレム完全解読ブック」など多数。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る