【ハンドボール】リオ五輪に向けて、「おりひめジャパン」いざ出陣! (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro 村上庄吾●写真 photo by Murakami Shogo

 藤井が教え子に背中を押されたなら、愛娘に背中を押されるのは、日本リーグ歴代最多1394得点の記録を持つ“レジェンド”田中美音子(ソニーセミコンダクタ)だ。40歳の田中は、今年3月のアジア選手権で主力選手の故障欠場の穴を埋めるため7年ぶりに代表に招集され、今予選も代表メンバーに名を連ねた。

「私の経験がチームの役に立てばとは思いましたが、長い間、代表も世界も見て来ていない。メンバーも知らない人が多い。子どものこともあるので、代表に呼ばれることは不安も多かったです」
 
 小学1年生の娘もまた、合宿に向かう母に「何回寝たら会えるの?」と不安そうに言ったという。ただ、「私もハンドボールをやりたい」とも田中は言われた。

「試合会場に娘も来ます。五輪行きを決めても、まだどれだけすごいことかわからないと思う(笑)。でも、勝敗はわかるんで勝ちたいですね。五輪出場だけなんです。選手として叶えてない夢は。5度目の挑戦なんで、いいかげん本戦に行きたいですね」
 
 監督期待の若手・松村は、田中が初めてシドニー五輪予選に挑んだ時、8歳だった。

「いよいよ始まるなって。予選を日本でできるのは大きいと思います。私、観客が多いほうが燃えるんで。きっと大きな声援を心強く感じるはずです」

 最後に横嶋が言った。「五輪行きを決めるであろう最終戦の韓国戦(25日)は、紙一重の戦いになると思います。最後は勝ちたい気持ちの強いほうが勝つ。負ける気はしないです」

 “おりひめジャパン”というネーミングについて聞くと、彼女たちは「かわいいですよね」と、少し恥じらいながら口々に言った。

 彼女たちの目前に、天の川が流れているとしよう。40年ぶりに、その大河を渡り切れば、その先に待つのは情熱の国ブラジルのリオデジャネイロだ。ライバル韓国を倒し、五輪への切符を手にするだけではない。おりひめジャパン、来夏、世界を驚かせる準備はできている。

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