【車椅子バスケ】世界を見据えて。エース藤本怜央が日本選手権で掴んだもの (2ページ目)

  • 瀬長あすか●取材・文 text by Senaga Asuka
  • 吉村もと●写真 photo by Yoshimura Moto

 東日本大震災で大会が中止になった翌2012年の優勝、そして大会の歴史を塗り替えた前回大会の5連覇で流した涙は、今回出なかった。決勝では終盤こそ堂々たるプレーで、試合の流れを引き寄せるシュートを放ったものの、試合を通してその確率が思うように上がらなかったからだ。

「決勝までの3試合はいいパフォーマンスができていたけれど、メンタルもフィジカルも一番大事なところで欠落していたということ。うれしさよりも課題が先に頭に浮かんで素直に喜べなかった」

 エースの自覚から、口をついて出たのは反省の言葉だった。

「僕はエースなのだから、プレッシャーが強くても、もっとショットを決めなければならない。千葉ホークスのような体格のいい選手を相手にしても通用する、シュートのバリエーションが少ないことも露呈したし、そういう高さに序盤から対応できる免疫を養う課題も感じられた。こういう感覚になれたのは、かなり久しぶり。苦しい競り合いができたことが収穫になった。日本代表として海外と戦う時、激しいプレッシャーは当たり前になる。そういった意味で、今回の日本選手権は質の高い大会になりました」

 今大会活躍した藤本は、自身2度目のMVP、9回連続となる10度目の得点王に輝いた。

 7月には、2016年リオデジャネイロパラリンピックのアジア・オセアニアゾーン出場枠をかけた世界選手権が韓国で開催される。藤本も、その日本代表のひとりだ。男子日本代表は、7位以上を目標に掲げ、強豪やライバルが集う同地区の出場枠拡大を狙う。

 4年前の世界選手権(イギリス)の「得点王」である藤本。押しも押されもせぬ日本を代表する選手なのだ。

 日本代表を背負っていく覚悟を決めたのは、2012年のロンドンパラリンピックで9位に終わったことがきっかけだった。

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