ジョコビッチの生涯グランドスラム達成が「A・マリー戦」である必然

  • 内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki  photo by AFLO

「すべての事象は、理由があって起きるのだと思う」と、ノバク・ジョコビッチ(セルビア)は言った。

 だからこそ、昨年の全仏オープン決勝戦でスタン・ワウリンカ(スイス)に3-1で敗れ、「生涯グランドスラム」を逃したことにも、意味があると彼は信じる。

 たしかに今になって振り返れば、この1年前の敗戦こそが、今の栄冠に連なる12ヶ月の旅の始まりであった。

快挙を成し遂げたジョコビッチ(左)を抱き寄せるマリー(右)快挙を成し遂げたジョコビッチ(左)を抱き寄せるマリー(右) 全仏での傷心から、5週間後――。ウインブルドンでロジャー・フェデラー(スイス)を破って優勝したとき、彼は、「とてもポジティブな精神状態になり、だからこそ、残りのシーズンは素晴らしい結果になった」のだと断言した。「ポジティブな精神状態」のまま走り続けた彼は、続く全米オープン、そして今年1月の全豪オープンをも制する。つまりは今年の全仏オープンは、ジョコビッチにとって4度目となる「生涯グランドスラムへの挑戦」であると同時に、「グランドスラム4大会の連続優勝」という歴史的偉業までもかけた大会となった。

 長いテニス史上で過去にわずか7名しかいない「男子生涯グランドスラマー」、あるいは1969年にロッド・レーバー(オーストラリア)が成して以来の「グランドスラム4大会連続優勝」――。あらゆる記録と誇りをかけて戦う決勝戦の相手も、「理由があって」その場に導かれた選手だったかもしれない。

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