サオリン&さおりが泣いた。タイ戦の大逆転劇を生んだメダリストの底力 (2ページ目)

  • 松瀬 学●文 text by Matsuse Manabu    中村博之/PICSPORT●写眞 photo by Nakamura Hiroyuki/PICSPORT

 18日夜の東京体育館。女子バレーボールのリオデジャネイロ五輪世界最終予選。大逆転をもたらしたのは、登録14選手、いや最後に登録メンバーから外れた4選手、スタッフを含めた日本代表「火の鳥ニッポン」全員の結束力と勝利への執着、そしてロンドン五輪銅メダリストの「経験」だった。

 韓国に痛恨の黒星を喫した直後の、難敵タイとの大一番だった。大黒柱の木村は右手小指の負傷で先発メンバーから外れた。試合前、荒木はこう言って、チームを鼓舞した。

「プレッシャーがかかったり、コワかったり、いろいろとあると思うけど、もうこのメンバーで戦うしかないんだから、ひとつになってぶつかろう」

 木村は短く、こうだ。

「みんなでやるしかない」

 試合は重苦しかった。レシーブでミスが出る。スピーディーなタイのコンビバレーに圧倒され、第1セットを失った。ここで眞鍋政義監督は、メンバーを大幅に入れ替えた。第2セット、小指に白いテープを巻いた木村をコートに送り出した。ロンドン五輪を経験した選手4人を全員、コートに並べた。

 29歳の木村、31歳の荒木、28歳の迫田、32歳の山口舞。苦しいときこそ、修羅場を潜り抜けてきたベテランの経験がより生きる。実は展開が苦しくなったら五輪メンバーを投入しようと、眞鍋監督は決めていた。

「苦戦したら、メダリストを使おうとずーっと思っていました。何が何でも負けられない試合ですし、(最終予選は)相当なプレッシャーの中で試合をするわけですし......。4人(の経験)が一番の勝因かなと思っています」

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