フロリダ在住、大坂なおみ。全米OP覇者を倒した17歳 (2ページ目)

  • 内田暁●構成 text by Uchida Akatsuki   photo by Getty Images

「観客が、人気も知名度もあるサム(ストーサー)を応援することは分かっていた。だから私は、ファンがビックリして私を応援したくなるような何かをしようと思っていたの」

 その「何か」とは、本人が最も自信を持つ武器――サーブであった。試合立ち上がりから大坂は、時速190キロに迫る高速サーブを全力でコートに叩き込み、自分が何者であるかを対戦相手及び観客に鮮烈にアピールしたのである。加えて時折、ストーサーが一歩も動けぬようなフォアの強打を見せつけ、観衆の度肝を抜いてみせた。

 また、マッチポイントを握られた時は、緊迫の場面でナーバスになる相手の心理を読み、「無理せずボールを返すこと」に専念。大坂の狙い通り、勝ち急ぐストーサーはミスを重ねてチャンスを逃す。逆に自身のチャンスの局面では、自慢の強打で相手の戦意を喪失させた。

 スピードと重さを兼備したビッグサーブ、鋭いスイングのフォアの強打、そして大胆かつ冷静にプランを完遂する胆力――。名刺代わりの大金星を掴み取った16歳は、「喜び過ぎてはいけない。ここが私のピークではない」と自身に言い聞かせ、淡々とネットに歩み寄って握手を交わした。

「人生最高の勝利か?」

 記者から向けられたその問いには、「いいえ、これは人生で2番目。一番嬉しい勝利は、初めて姉に勝った時よ」と答えて、笑いを誘った。

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