ハンパじゃない。錦織圭「世界8位からの戦い」

  • 内田暁●文 text by Uchida Akatsuki 真野博正●写真 photo by Mano Hiromasa

 1375万分の1――。

 現在、世界ランキング8位につける錦織圭が立っているのは、そのような高みである。

 米国のマーケティング会社『スポーツ・マーケティング・サーベイ』によると、世界中のテニスの競技人口は1億1000万人。そのうちの8人という意味で彼は、1375万分の1の存在といえる。ここで言う「競技人口」とは、週に最低1回はその競技を本格的にたしなむ人の数を指す。ちなみに同社の調べによると、同じ定義で弾きだす競技人口は、ゴルフが6400万人、野球は3500万人。テニスがいかに世界的に人気のスポーツであるかが、この数字に表れている。

全米オープン準優勝で世界ランキング8位となった錦織圭全米オープン準優勝で世界ランキング8位となった錦織圭 先の全米オープンで準優勝した錦織は、その結果として世界の8番目という地位を得た。テニスの世界では、大会成績とランキングは綿密に結びついており、それは、「世界○位に勝ち、△位に敗れたからこれくらい」というような主観で決められるわけではない。『ATPランキングポイント』と呼ばれる厳密なる「強さの数値化」により、毎週のように変動していくのである。

 テニスの大会は世界各地で年間70ほど開催されているが、それらは「グランドスラム」と呼ばれる全豪、全仏、全英、全米の4大会を頂点として、ピラミッド状にランク付けされている。グランドスラムに次ぐのが「マスターズ1000」であり、これが年間9大会。それに続くのが「ツアー500」で、こちらは11大会。ちなみに、来たる9月29日より東京・有明テニスの森で開催される楽天ジャパンオープンも、このツアー500のカテゴリーに属する。さらに500の下には 「ツアー250」が40大会ほどあり、現在、錦織が出場中のマレーシアオープンは、こちらのカテゴリーだ。

 これら数多ある大会の中から選手たちは、年間20前後の大会を選んで出場していく。錦織は今季すでに14大会に出場しており、加えて今後は楽天オープンを含む4大会への出場を予定している。さらには、もし年間レース(※)で8位以内に入れば(現在6位)、シーズン最後の「ツアーファイナル」と呼ばれる上位8選手による大会に出場も可能だ。

※世界ランキングは現時点から過去1年間の累計ポイントで計算され、年間レースの順位は2014年1月からのポイントで計算される。

 さて、先ほど「選手たちは年間約20大会ほどを選んで出場していく」と書いたが、現実的には、さほど多くの選択肢が残されているわけではない。なぜなら、錦織のようなトップ選手たちには、出場を義務づけられている大会が多々あるからだ。たとえば、前年度をランキング30位以内で終えた選手たちには、以下の出場義務が課されている。

・グランドスラム4大会すべて
・マスターズ1000の8大会(マスターズの中でモンテカルロ大会だけは例外的に出場義務の対象外)
・ツアー500の中から4大会(そのうち1大会は全米オープン後に出場しなくてはならない)

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