木村沙織「世界一のために、ハイブリッド6を突き詰める」

  • 中西美雁●構成 text by Nakanishi Mikari
  • 織田桂子●写真 photo by Oda Keiko

 ワールドグランプリでは、新戦術「ハイブリッド6」(※)を予選から試し、開幕から5連敗と決して良い滑り出しではなかった。しかし、タイに勝ち、きっかけをつかむと最終戦でブラジルに敗れるまで8連勝。新戦術という視点から、この大会を振り返ってもらった。

※ミドルブロッカー(MB)の位置にサイドアタッカーを置いて、より複雑で多彩な攻撃を狙う全日本女子の新戦術

「自分たちが世界一になるために、何か新しいことをやらなきゃいけないという状況の中で、予選から新しい戦術を実践しました。なかなか勝てなくて不安になった部分ももちろんありましたが、やり続けていく中でチームの絆がすごく強くなった。負けていても新戦術が上手くいくこともあったし、ひとつタイに勝ったことで吹っ切れました。負けが続いた時も、あきらめずに(ハイブリッド6を)継続してきてよかった。世界一になるためには、今の戦術を貫く、そしてよりいっそう細かく、突き詰めることが必要ですね」

 まだまだ、ハイブリッド6の完成度は高くない。眞鍋監督はブラジル戦後の会見で「試合の途中で、練習よりトスが遅くなった、そこはもっと徹底しないと」と述べていた。全日本女子は一度速いトスに取り組んだが、2011年のW杯以降、木村の調子を取り戻させることが目的で元に戻したと言われている。眞鍋の今回の言葉からすると、やはり"速いトス"を実践していくようだが、木村自身はどう思っているのだろう。

「基本的には速いトスでないと、みんなが同じ攻撃に入る意味がなくなってしまうので。(トススピードは)なるべく速くして行きたい。でも、絶対こっちに上がってくる、そして2枚3枚待たれているという状況で、速いトスを上げられても、打てるコースの幅が狭くなってしまう。だから、そこはしっかり高いトスをもらって、ブロックを見て決めにいけるよう、状況次第で使い分けていかないと。

 トスの速さは、監督が言うように1秒以内でやっていくことがベストです。練習ではタイムが計れるんですけど、試合の中では、体にしみこませた動きをやるだけなので、セッターもアタッカーも、練習段階から速いコンビを体にしみこませたいです。以前のように、スピードを元に戻すということはもうないです」

 このコメントからも。リオ五輪に向けてこの戦術を突き詰めていくことに、迷いはないことがうかがえる。そして、言い切った。「それしかないと思います」と。

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