デビス杯で歴史的快挙。錦織圭と日本代表チームが示した確かな成長

  • 神 仁司●取材・文・撮影 text&photo by Ko Hitoshi

 日本男子テニスの新たな世界への扉を開けたのは、やはり錦織圭だった。

 国別対抗戦デビスカップ・ワールドグループ(WG)1回戦、「日本対カナダ」で、日本は4勝1敗で昨年ベスト4のカナダを破り、歴史的勝利をあげた。日本のエースである錦織は、単複で合計3勝を挙げて勝利の立役者となった。

ワールドグループで初勝利をあげた日本代表男子。左から杉田祐一、添田豪、錦織圭、内山靖崇、植田実監督ワールドグループで初勝利をあげた日本代表男子。左から杉田祐一、添田豪、錦織圭、内山靖崇、植田実監督 デビスカップは、初日にシングルス2試合、2日目にダブルス1試合、最終日にシングルス2試合を行ない、先に3勝を挙げた方が勝利国となる。1981年に世界のトップ16カ国で構成されるWG制になってから、日本は過去3回WG1回戦を戦っていたが、いずれも強豪国の壁に阻まれ敗退していた。

「(1回戦突破は)大きな目標。以前はここ(WG)に入ることが目標でしたけど、2回戦(ベスト8)に行けるチームだと思いますし、歴史的な勝利を目指していきたいです」。こう語っていた錦織の活躍で、WG1回戦で日本は初勝利。見事ベスト8進出を決めた。

 実は今回、カナダのエースのミロス・ラオニッチ(ATPランキング11位)が、右足首のケガの悪化のため、直前になって代表メンバーから離脱していた。さらに、ナンバー2のバセク・ポスピシル(25位)も腰のケガでプレーを断念した。

「誰が相手でも、シングルスで勝つことが自分の使命なので、気持ちの面では変わりはない」

 こう語った錦織は、オープニングマッチのシングルスで世界18位の力を見せつけてストレート勝ち。ただ、第2試合のシングルスで添田豪(140位)が敗れてしまい、日本は1勝1敗となった。

2日目のダブルスは、勝てば王手をかけられる大事な試合。ここで、植田実デビスカップ日本代表監督は、体力的に余裕のあった錦織をダブルスに投入することを決断し、チーム最年少で21歳の内山靖崇と組ませた。

「選手達には、初日の流れ次第で、誰でも行けるようにしておいてくれと話していた。正直迷ったところはあったが、勝つための最善策と思った」(植田監督)

 この采配が的中した。普段ダブルスの練習はほとんどせず、年に数回しかダブルスの試合には出場しない錦織は「ダブルスに出るのは、正直少し迷いがあった」という。だが、今回は1週間前からダブルスの練習もして備えていた。試合では、彼のゲームセンスとショットメイクの才能が、ダブルスでもいかんなく発揮された。

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