【女子バスケ】アジア制覇の要因と未来に向けた3つのキーワード

  • 小永吉陽子●文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 43年ぶりのアジア選手権優勝。しかも7戦全勝でのアジア制覇は初の快挙だ。しかし地上波での放映はなく、決勝と準決勝にいたっては生中継もなかったため、今回の優勝を目にできなかったファンもたくさんいた。そしてこの結果に「なぜ優勝できたの?」と疑問に思った人もいるはず。日本の女子バスケはそれだけ長い間、国際大会ではあと一歩のところで涙を飲んできた。

ゲガ人のいない万全な状態で臨み、見事アジアチャンピオンを勝ち取った日本女子バスケゲガ人のいない万全な状態で臨み、見事アジアチャンピオンを勝ち取った日本女子バスケ しかし、日本は昨年のロンドン五輪最終予選であと一勝のところで敗れた、いわば世界で13番目のチーム(五輪出場枠は12カ国)。今年になって急に強くなったわけではないのだ。

 アジアでライバルとされる中国は世代交代の最中にあり、韓国は負傷者が続出した。だが、大会にピークを合わせたチーム作りができなかったこと自体が実力であり、日本はこの最大のチャンスを、3クォーターラインから激しく当たるディフェンスを武器につかみに行った。

 昨年のロンドン五輪最終予選で、強豪チェコ相手に47-53と迫ったのも運動量の多いディフェンスを発揮したからだった。それ以降も、世界の強豪に通用したディフェンスとスピードを継続し、オリンピック次点の国が、"あと一歩"の壁を乗り越えたからこそ、つかんだ優勝だったのだ。

 これまで日本が乗り越えられなかった"あと一歩"の壁とは何だったのか。内海知秀ヘッドコーチ(HC)と選手のコメントから、優勝の原動力と今後の可能性について考察してみた。

キーワード①乗り越えた"あと一歩"の壁――宿命のライバル韓国を撃破

 過去のアジア選手権での日韓戦成績は韓国の25勝に対して、日本は5勝。韓国に勝ったのは2004年アテネ五輪予選の準決勝まで遡(さかのぼ)らなければならず、圧倒的に分が悪かった。それが今大会、予選ラウンドと決勝で2連勝。特に予選ラウンド3戦目の韓国戦を、延長で制したことが今大会のターニングポイントになった。

 日本は終盤に7点のリードを奪ったが、土壇場で連続3ポイントを決められて、残り44秒で逆転されてしまう。もはやここまでか、と思われた。しかしここから、大神雄子と渡嘉敷来夢、ふたりのエースが攻めたのだ。

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