突破できるか?今そこにある、バスケットボール新リーグ「NBL」の課題

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

『スポーツ紛争地図』 vol.3 第1回

 前回の記事(※JBLとbjリーグの統合はなぜ進まないのか?)を読まれた日本バスケットボール協会・新リーグ運営本部副本部長、山谷拓志COO(最高執行責任者)から編集部に連絡が入った。「一度、新リーグ(=NBL)としての話も聞いていただきたい」という意向であった。

 大歓迎である。媒体がきっかけとなり、議論が活性化するのは好ましいことであり、それでこそ、問題を提議した意味がある。JBLを母体とする新リーグとしてNBL(National Basketball League)は創設されたのだが、しかし、狼少年の如く掛け声だけで、プロ化を進め切れないでいるJBLへの不信感から、完全プロ化を目指すbjリーグからの参加チームは千葉ジェッツ1チームに留まった。

 待ち望まれた大同団結、すなわち統合はならなかった。「またか」。問題の先送り感は否めなかった。この現状を、またNBLのグランドデザインをどう見るのか。2013年9月開幕を控えた新リーグ運営本部へ出向いた。

 山谷COOはJBLのプロチームであるリンク栃木ブレックスの社長時代、3年目にリーグ制覇、更には3年連続黒字という、戦績と経営の両面で大きな結果を叩き出し、その実績を買われて現職に就任。それゆえに経営者の立場からプロ化に向けての課題、JBLの問題点も熟知する。豊富な成功体験に裏打ちされた興味深いコメントが続々と飛び出した。

新リーグ運営本部副本部長、山谷拓志COO(最高執行責任者)新リーグ運営本部副本部長、山谷拓志COO(最高執行責任者)山谷「前回の記事を拝読させていただきました。当然マスコミの皆さんから見れば、バスケ界はリーグがふたつもあって『混乱する』という意見があってしかるべきだと思います。けれども、僕自身は統合というものが目的だという認識はなくて、それが絶対条件ではないと思っています。なぜかといいますと、例えばほかの国を見たって、NBAの下にABAとかいろんな独立リーグがいっぱいあったりするわけです。

 日本はトップリーグがふたつあると言われるんですけれども、現時点でJBAが定義する唯一のトップリーグはJBLであり、bjリーグは正確に申し上げればヒエラルキーの枠外にある認定団体という位置づけになりますので、それが併存していること自体はおかしくない現象だと思います。ただ、これまでの経緯を踏まえて見ると、やっぱり「どうなってるんだ、バスケ界」と思われてしまうのは致し方なしです。相変わらず分裂したまま、というご批判もありますが、非営利法人でやっている組織(JBL)と、株式会社でやっている組織(bjリーグ)、それぞれのリーグをくっつけるということについては、物理的に不可能ではないかなと。ですので目指すべきは「統合」ではなくて、私は「統一」だと思っているんです」

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