日本バスケ界にある格差。
何のために新リーグをつくるのか?

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko
  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

廣田氏はbjリーグ横浜ビー・コルセアーズの代表でもある廣田氏はbjリーグ横浜ビー・コルセアーズの代表でもある
――サラリーキャップという制度を設けながらも出発時から埋めようのない格差があるということでしょうか。

「そうですね。私はよく言うのですが、大切なのは何のために新リーグを作るのかということだと思うんですね」

――成立させる目的ですね。サッカーは問題をはらみつつも日本代表の強化というひとつの大きな大義は完遂されつつあります。

「だからバスケットの場合は、NBAに対しての新リーグなのか、そうではないのか。そうでないんであれば、どこの立ち位置にするのかということです。要はNBAという世界を目指すんであれば、Dリーグ(=ディベロップメントリーグ、NBA傘下でNBAの選手を育成するためのリーグ)と同じでいい。そうするとやっぱり平均年俸は300万ぐらいでいいんです。ここで頑張ってNBAを目指すんだと」

――割り切るわけですね。

「あるいはぐっと上を近くする。上はもちろんNBAです。日本のチームでどこかが頑張って、NBAに1チーム加盟する。それぐらいの思いきった施策をとれば、面白いですよね。もしくはユーロリーグのような、ヨーロッパ各国リーグの上位チームがユーロリーグでヨーロッパの覇権を目指し完結する。これをアジアリーグに置き換えるとか。これはあくまでもたとえですが。

 つまり、このように新リーグをどこの位置にするのかということが、全然明確にならないので、それが問題だと思うんです。私はそこが一番だと思います。将来的に子どもたちにどこを見せるのかということです。10年後、20年後、さらに言えば今は生まれていない子どもたちに何をバスケットに求めさせるのかというビジョンがないと、同じことの繰り返しです。そこのフィロソフィーさえしっかりしていれば、サラリーキャップを5000万あげたからって、なんでもないわけですよ」

――かける予算に信条の裏づけかあるのか、ないのか。

「だから、本当に今から真剣に取り組んでいけば、まだ20年後の子どもたちには十分間に合うでしょうね。それを今は毎年毎年、先送りしていて。このプロ化の話が出たのが、1993年であれば、もう20年も無駄な時間を過ごしたわけですよ。日本協会の強化技術関連は機能していると思うんですよ。しっかりとされているんですよ。しかし、プロデュース能力に長けた人材が、本当にいないですね」

――Jリーグの場合は当初、電通がサッカーのプロ化は無理と試算したところ、博報堂がそれに変わって成し遂げました。広告代理店との関係、役割はどうなのでしょうか。

「代理店はそのように実績もあるのですが、ただやっぱり、代理店がバスケットに躊躇するのは、器の小ささです。何万人というスタジアムが舞台ではない。だから今回、仙台でゼビオさんがゼビオアリーナ(約4千人収容)という施設を自前で作りました。それがひとつのメルクマールになっていくんじゃないかと思いますね。そういう企業と取り組みをしていけば、器もできながら、スポンサーもつくと思います」

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