【ラグビー】円熟のアタッキング。日本代表強化につながるサントリーの優勝

  • 松瀬学●取材・文 text by Matsuse Manabu
  • 井田新輔、産経新聞/Getty Images●撮影 photo by Ida Shinsuke,Sankeishinbun/Getty Images

決勝でパナソニックに勝利して4年ぶりの優勝を決めたサントリー決勝でパナソニックに勝利して4年ぶりの優勝を決めたサントリー
 左手一本。

 これもまた、サントリーのプライドの表れだった。後半7分頃、パナソニックの逆襲を浴びる。23-13とリードしていたものの、厳しい試合展開の中で相手のエース、CTBジャック・フーリーにライン際を爆走された。

 トライ寸前だった。が、懸命に戻ったサントリーのFB有賀剛が左手を伸ばす。190cmの南アフリカ代表の左足に絡め、さらに両手でパックしながらタッチラインに押し出した。

 値千金のタックルである。試合後、有賀の顔がほころぶ。

「あきらめない。絶対、トライをとらせない。そんな気持ちでした。下に入って、しっかり倒そうと意識していました」

 2月26日。曇天の秩父宮ラグビー場。名将エディ・ジョーンズ監督の2年目である。パナソニック(旧三洋電機)に47-28で完勝し、4年ぶりのトップリーグ王者に就いた。観客は1万人と寂しかったけれど、円熟の『アタッキングラグビー』をファンに示した。

 チームの成長を問うと、有賀は続けた。

「より精度が高まった。フィジカルも強くなり、コミュニケーションがよくとれるようになった。ラグビーの理解度が高くなった。自分たちのアタックをすれば相手ディフェンスは対応できない、と分かっていました」

 この自信は何なのだろう。総合力、即ちチーム力が厚みを増しているからか。試合直前、レギュラーのロック篠塚公史、CTB平浩二がケガで欠場するアクシデントがあっても、代わりの選手が奮闘する。「個」ではなく、「チーム」で戦う。そこにサントリーの進化を見る思いがする。

 スタイルは昨季と同じ「アタッキングラグビー」だが、「精度」「フィジカル」「アグレッシブさ(激しさ)」、そして「フレキシブル(柔軟性)」がプラスされた。

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