【テニス】錦織圭をベスト8に導いた3つのカギ (2ページ目)

  • 内田 暁●文 text by Uchida Akatsuki
  • photo by AFLO

「第2セットの頭からは、気持ちを切り替えました」

 リードを奪われたときの状況を、錦織はあっさりとそう振り返った。言うのは簡単だが、誰もができることではない。だが昨年終盤、わずか1ヶ月の間に3人のトップ10選手を破り、そのすべてで逆転勝利を収めた錦織には、逆境での強さと、自分を信じる根拠があった。「バックを攻め、フォアで打たせない」という基本の戦術に立ち返り、相手のバックにボールを集めた。

 それも、単につなぐボールではない。いつウィナーになっても不思議ではないほどに高質なショットを、鋭角に叩きこんでいく。弱点を突かれたツォンガは次第に苛立ちはじめ、無理に打っては、得意のフォアでもミスを量産し始めた。対してラリーで優位に立つ錦織は、躍動感あふれるショットを次々と打ち込んでいく。第2セットは、ウィナーの数で3本上回った錦織が6-2で奪取。さらに第3セットも圧倒的な安定感を誇った錦織が、わずか3本しかミスを犯さず6-1で奪った。

 第4セットは互角の展開ながらも、少ないチャンスをものにしたツォンガが奪い返す。そして迎えた、ファイナルセット。このセットで錦織は、なぜ彼がこの1年でランキングを73位も上げたのか、その理由をすべて開示してみせた。

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