37年目の鈴鹿8耐。ケビン・シュワンツの「伝説の走り」を見よ! (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 竹内秀信●写真 photo by Takeuchi Hidenobu

 1964年生まれのシュワンツは、1980年代後半から1990年代前半の二輪レース界で活躍した、スズキの看板選手だ。グランプリではヤマハのウェイン・レイニー(アメリカ)と数々の劇的なレースを繰り広げ、世界中のファンを魅了した。1993年には世界チャンピオンの座に就くが、翌々年に引退。最大のライバルだったレイニーが1993年のレース中に下半身に麻痺を抱える事故に遭い、現役を退(しりぞ)かざるをえなかったことも、シュワンツの闘争心低下の大きな理由となった。シュワンツが使用していた『ゼッケン34番』は、今でもMotoGPの永久欠番になっている。

 それ以降、公的なレース活動を一切してこなかったシュワンツだが、2013年の8耐でチームカガヤマ(スズキ)から18年ぶりに現役復帰を果たした。世界中の二輪レースファンが注目する中、灼熱の鈴鹿サーキットに登場したシュワンツは、レイニーのヘルメットを被ってレースに臨んだ。そして、かつてのようなキレのいい走りで、コース上で20代の日本人若手選手たちを相手にバトルを繰り広げたのだ。

 2013年7月27日(日)午後7時30分、213周を走行したチームカガヤマは、3位でチェッカーを受けた。チームリーダーの加賀山就臣は、表彰台の上で大粒の涙を溢れさせた。その姿は、かつてのシュワンツとレイニーの激闘を知る日本のオールドファンだけではなく、この日のレースで初めてシュワンツの走る姿を見た若いファンたちも感動させるに充分な光景だった。

 優勝を飾ったのは、MuSASHi RTハルク・プロ。ライダーは23歳(当時)の高橋巧と30歳のレオン・ハスラム(イギリス)、そしてこのときが8耐初参戦だった20歳のオランダ人マイケル・ファン・デル・マークのトリオ。ベテラン勢の健闘と、若い世代の活躍という、好対照をなす世代がともに登壇した昨年の表彰台は、今の8耐の在り方をはからずもよく反映したリザルトだったといえるだろう。

 今年の8耐も、このディフェンディングチャンピオンチームは昨年と同じライダーの顔ぶれでレースに臨む。現在、高橋は全日本のJSB1000クラスでランキング首位に立ち、ファン・デル・マークも世界スーパースポーツ選手権で8戦中4勝を挙げて首位独走状態にあるだけに、今年も彼らは優勝の最有力候補だ。

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